
同じNHKでも、SMAPの映像が流れる番組と流れない番組があるのは、なぜか――。
昨年大みそかに放送された『NHK紅白歌合戦』のオープニングでは、『平成の紅白名場面』のアーカイブス映像としてSMAPの『世界に一つだけの花』が流れた。2日前の29日に放送された『平成の紅白、まるごとおさらいしちゃいます!~平成最後の紅白直前スペシャル~』では、不自然にもSMAPの映像が流れなかったため、『紅白』ではインターネット上で驚きの声が上がった。テレビ局関係者が話す。
「よく誤解されていますが、テレビ局が勝手に過去の映像を使用できるわけじゃないんですよ。必ず権利を持つ事務所に許可を得る。SMAPの場合、ジャニーズ事務所ということになりますが、大きな事務所だけでなく、基本的には個人事務所や引退したタレントにも確認しています」
今回の『紅白』でSMAPの映像が使われたということは、ジャニーズ事務所が許可したということなのか。
「一般的に同一番組内であれば、ある程度自由に過去の映像が使えます。今回の『紅白』内で過去の『紅白』の映像を使用する分には、さほど問題はありません。29日放送の『直前スペシャル』のようなスピンオフ的な番組になると、かたち上は別番組ということになるので、権利を持っている事務所への許可が必要になります。特番での映像使用となると、基本的には事務所の許可は必須です」
NHKでも民放でも、音楽番組であまりSMAPの映像が流れないのは、テレビ局が忖度しているか、もしくはジャニーズ事務所側が断っているかの、どちらかということになる。
「NHK側が忖度して、そもそも確認しなかったか可能性もありますが、許可取りをする、しないは局の自由なので、さすがに確認くらいはしているんじゃないかと思いますけどね。NHKだって本当は使いたいはずですよ。でも、権利は事務所にあるので、自由に使えない決まりになっている。SMAPの映像を流さなかったことについて、むやみにテレビ局を責めるのは勘弁してほしいです」
では、いつ頃から、このような慣習になったのか。
「1980年代半ばくらいまでは、テレビ局は過去映像を自由に使えました。でも、芸能事務所が法律的な権利を主張して、局側も納得せざるを得なくなった。事務所側としては、『過去の映像ばかり使われると、歌手が出演の機会を奪われる』という事情や、好き勝手に映像を使われると権利ビジネスの展開上、支障が出るという事情があるためです。当時は事務所よりテレビ局のほうが強かったので、事務所側の主張は、局との力関係を対等にするために必要なことだったかもしれません。今は両者の立場が逆転してしまった感もありますが、映像使用の件が象徴するように、テレビ局は事務所を無視して好き勝手できないのです。もっと両者の力が均衡したほうが健全だとは思いますが」
過去の映像使用ひとつとっても、複雑な利害関係が存在しているようだ。
(文=編集部)