
今年のNHK大河ドラマ『いだてん』の第1話が6日、放送された。
明治42年、柔道創始者で東京高等師範学校校長である嘉納治五郎(役所広司)は、駐日フランス大使から、スウェーデンのストックホルムで開催される次回五輪に日本も出場すべく、話を取りまとめるよう要請される。嘉納は要人への説得や金策に奔走するが、東京高師教授でヨーロッパから日本に体操を持ち込んだ人物でもある永井道明(杉本哲太)からは、第4回ロンドン五輪を現地で観戦した経験から、欧米人に体格の劣る日本人がもし五輪に出場すれば「死人が出る」と指摘される。また、日本体育会会長の嘉納久宜や文部大臣の小笠原からも、「体育は教育。子どもたちに健康な肉体を授けるのが我々の使命。一部、わずか数名が技を競う“スポーツ”などには意義を感じない」などと反対さる。
結局、嘉納は五輪参加辞退を伝えるためフランス大使館を訪れる。だが、そこで大使からストックホルム五輪の会場となる競技場の完成予想図やポスターを見せられ感銘を受け、勝手に日本も参加すると宣言してしまう。日本人初のIOC(国際五輪委員会)理事となった嘉納は、大日本体育協会を設立して初代理事長に就任。それでも五輪参加に反対する嘉納久宜らに対し、「平和のための真剣勝負。相手を憎むのではなくて、認めた上で勝とうとする。相互理解だ。それが五輪の精神であり、日本の武道の精神だ」と五輪参加の意義を訴える。
そして五輪参加選手を選考するため、東京・羽田に運動場を整備し、大運動会を開催。「死人が出る」と強硬に反対する永井を尻目にマラソンを実施するが、次々と落伍者が出る事態に。嘉納らが沈痛な面持ちで選手のゴールを待っていると、豪雨のなかを颯爽と走る金栗四三(中村勘九郎)が運動場に現れ、世界記録を大きく上回る記録でゴールテープを切るところまでが放送された。
このほかにも、日本で初めて開催された東京五輪の招致成功に沸く昭和34年の東京を舞台としたドラマも描かれ、2つの時代を行き来するかたちで物語は進行していったが、映画業界関係者は語る。
「金栗が日本人として初めて五輪に出場するに至った背景には、どのような経緯があったのかという歴史的エピソードや人間ドラマの数々は、見ていて興味深く感じました。ただ、“画(え)的”には非常に似ている2つの時代が短いスパンで交互に入れ替わり、視聴者的には、かなりわかりにくかったという印象は否めません。それに加えて、特に前半部分の嘉納にまつわるドラマ部分は、時代背景の説明不足のためか、嘉納がいったい何をやっているのか、いまいち理解できないままドラマが進んでいってしまいました。もし第2話以降も同様に2つの時代がパラレルに展開されるのだとしたら、特に大河のメイン視聴者である60代以降にとっては、かなり厳しいものがあるのではないでしょうか」