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女性誌の付録なし小型版、なぜ大人気?出版社が一様に口を閉ざす理由

文=藤野ゆり/清談社
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女性誌の付録なし小型版、なぜ大人気?出版社が一様に口を閉ざす理由の画像1「美的」(小学館/左)と「VERY」(光文社/右)

 コンビニエンスストアの雑誌コーナーで目を引く、ファッションや美容を扱った女性誌。数年前から、この女性誌を一回り小さくした“ミニサイズ版(バッグサイズ版)”が並ぶようになったのをご存じだろうか。

 このミニサイズ版、基本的には通常版をそのまま小さくしただけで、価格もやや割安な程度だ。しかし、入れ替わりが激しいコンビニに並んでいる以上、それは一定の需要があるということ。では、誰がミニサイズ版の雑誌を買っているのか。

手軽さが大好評…出版社の本音と建前

 まず、バッグサイズの女性誌を発行する出版社に意図や狙いを聞いてみたが、いずれも口が重く、取材を受けてくれない。

 そこで、女性向けウェブサイト「サイゾーウーマン」で「女性誌速攻レビュー」を連載する女性ファッション誌の専門家・ルイーズ真梨子さんに聞いてみると、出版社がバッグサイズ版について口が重い理由が見えてきた。

「バッグサイズ版は、『サイズを小さくすることで持ち運びやすくなり、職場などでシェアしやすい』という理由で発売されています。でも、それはあくまでも建て前で、実際は“出版不況”の雰囲気を出したくないだけ。本音では、『ミニサイズにすることで、スマートフォンや電子書籍の手軽さに対抗したい』というのが一番の理由でしょう」(ルイーズ真梨子さん)

 バッグサイズ版の初登場は、2012年までさかのぼる。30代女性向けファッション誌「Domani(ドマーニ)」(小学館)の12年6月号が元祖だという。

「『荷物が多い働く女性たちのために持ち運びやすい雑誌を』というコンセプトで、内容はそのままにサイズだけを縮小した『Domani』が発売されたんです。すると、『小さくて軽い』『読みやすい』と読者に大好評。その後、後を追うようにバッグサイズ版を発売する女性誌が増えていき、13年にはほとんどの女性誌の間で一般化しました」(同)

 確かに、「Domani」の発行元である小学館は同時期にファッション誌の「AneCan(アネキャン)」「Oggi(オッジ)」、美容誌の「美的」など、立て続けにバッグサイズ版を発売している。

「バッグサイズ版といっても、内容は通常版とまったく変わりません。ただし、サイズがA4からB5サイズに縮小されたことで重さが半分程度になりました。重くて持ち運びにくい女性誌が一気に手軽な雑誌になったんです」(同)

付録なしでも絶好調…裏に「隠したい」願望?

 正確にいうと、バッグサイズ版は通常版がそのまま小さくなっただけではない。通常版に付いていたはずの付録がなくなっているのだ。付録が付かず、写真や文字の情報が小さくなった一方で、価格は通常版より1割安い程度。コストパフォーマンスの面では疑問が残るが、なぜ支持されているのだろうか。

「私もよくバッグサイズ版を購入するのですが、個人的に付録には魅力は感じていないし、読みやすくて安いのでお得感は非常に高いと思います」(同)

 そもそも、ルイーズさんによれば、バッグサイズ版を発売している雑誌の読者層は、その大半がアラサーやアラフォー世代の“バリキャリ”女性だという。いわば、「付録なんて使わない」という読者を持つ雑誌ばかりなのだ。

 たとえば、前述の「美的」、「日経ウーマン」(日経BP)、「Marisol(マリソル)」(集英社)……。これらの雑誌はバッグサイズ版を出しているが、すべて30代女性向けのファッション誌やライフスタイル誌にカテゴライズされる。

 一方、付録目当ての読者が多いティーン向け雑誌は、そのほとんどがバッグサイズ版に手を出していない。アラサー・アラフォー世代の女性は「付録なんていらないから、より読みやすく」という点を重視しているわけだ。

「中高年婦人を対象にした『家庭画報』(世界文化社)は、バッグサイズ版を発売したところ、売り上げが一気に伸びたという話もあります」(同)

 そしてもうひとつ、アラサー・アラフォー世代の女性にバッグサイズ版の人気が高い理由について、「『持ち運びたい』のではなく『隠したい』という願望があるためではないか」とルイーズさんは分析する。

「たとえば、家には夫や子どもがいるのに、『私たちが1000万円貯められた理由』などと書かれた読者ページを食い入るように見るのって、なんとなく気恥ずかしいんですよね(笑)。

 雑誌は、読者の願望やライフスタイルを投影しているもの。私は『シェアしたい』というより『ひとりでひっそり読みたい』ものだと思っています。バッグサイズ版は、その願望にぴったり合致しているのではないでしょうか」(同)

なぜ電子書籍より紙の雑誌を選択?

 しかし、「それなら電子書籍でもいいのでは」という気もする。今やほとんどの雑誌がデジタルでも読むことのできる時代だ。「ひとりでひっそり読みたい」のなら、バッグサイズ版より電子書籍のほうが適しているのではないか。

 この疑問に、ルイーズさんは「紙の雑誌だからいいんです」と反論する。

「今のアラサー・アラフォー世代の人って、デジタルより紙のほうが頭に入るギリギリの世代なんです。特に雑誌はなんとなく流し読みする人がほとんどなので、スマホやタブレットで見ても頭に残らない。『手軽に読みたい、でも電子書籍は苦手』……そんな人にはバッグサイズ版がぴったりだと思いますよ」(同)

 どうやら、バッグサイズ版の女性誌は、アラサー・アラフォー世代の女性をピンポイントで対象にしたビジネスのようだ。年々、発行部数や売り上げが減少している雑誌だが、この世代向けの女性誌は意外に最後までしぶとく生き残るかもしれない。
(文=藤野ゆり/清談社)

●取材協力/「株式会社Surpass

清談社

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
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