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たとえば、金属管の中に何も注入しない空の状態ではG#(ソのシャープ)の音が発せられ、水を満たした場合はF#(ファのシャープ)の音が発せられた。その他、グローバー博士の学生らは、地元の川の水からインドのバッファローのミルクに至るまで、あらゆるものの密度の計測にその装置を利用した。そして、最終的に、金属管の厚みを薄く、長さを5センチ以上にすることで最適なムビラ・センサーをつくり出せることがわかった。


音という周波数の違いが物質を判別する
グローバー博士が開発したムビラ・センサーは、疑わしい水薬と既知の製品の密度の違い、すなわち発せられる音の周波数の違いによって、2つの薬が同じ成分を有しているかどうかを判別できる。具体的に、風邪薬の例を紹介しよう。
グローバー博士らは、リバーサイド地区のさまざまな薬局で購入した、ポピュラーな風邪・インフルエンザ薬6品をテストしてみた。すると、センサーに仕込んだすべてのサンプルは同じ音(周波数)を発した。これは、サンプルの成分が同一で本物であることを示している。
だが、発展途上国ではいくらかジエチレングリコールが混入した偽の風邪薬が出回っている。ジエチレングリコールは、外見、味、匂いが無害のグリセリン(多くの風邪・インフルエンザ薬の有効成分を含めたシロップに利用される)と似ているが、経口摂取すると有毒である。1985年以降、ジエチレングリコールを含む薬によって引き起こされる致命的な集団中毒は、平均すると約2年ごとに世界のどこかで発生してきた。そのため、専門家と消費者の双方によって利用可能な廉価なセンサーがあれば、人々の命を救うことができる。
もちろん、グローバー博士の研究チームは、自分たちのムビラ・センサーで発せられる音の周波数を調べて、無害のグリセリンと致死的なジエチレングリコールとの違いを成功裏に判別できた。ただし、その周波数の違いはわずかに10Hzだった。
周波数の差が大きければ、耳で聞いてもその違いがわかるが、わずかであれば、機械の力を借りねばならない。だが、それも決して難しいことではない。
今では、その物質の判別作業は極めて簡略化されている。まず、センサーの金属管に調べたい物質を満たして、はじいて音を出す。その際、スマートフォンを用いて発せられた音を録音する。次に、その録音データを彼らがつくった分析用ウェブサイトにアップロードすると、オンラインで専用のソフトウェアがそのデータに基づいて周波数を表示する。比較対照の物質でも同じことを行い、周波数が一致すれば同一の物質、異なれば異なる物質であることを意味する。