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百田尚樹『日本国紀』は世紀の名作かトンデモ本か

文=八幡和郎/評論家、歴史作家
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 また、近現代史については、いわゆる教科書問題の結果として、1980年の鈴木善幸内閣で、宮澤喜一官房長官の談話として方針が示された。それに基づいて定められた指導要領で、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という条項が設けられ、それを過剰に配慮して、彼らの言い分に沿った記述がなされている。その結果、当時の日本の立場はおろか、現在の日本政府の立場すら尊重されていない。

 そういう状況だから、最初に書いたように、『日本国紀』を読めば、“左寄りを右寄りで中和させる”ことになって、ちょうどいいかもしれない。

『日本国紀』について、山口二郎法政大学教授はツイッターで、こう批評した。

「百田のほら話を読んで日本に生まれたことを感謝できる人は、よほど幸せなのだろう。一昨日、ある勉強会で保阪正康氏の話を聞いた。戦争について調べれば調べるほど、なんでこんな愚かな指導者の下、無謀な戦いで大勢の人が非業の死を強いられたか、腹が立って仕方ないという思いを共有した」(11月21日)

 それに対し百田氏は、こう反論している。

「他人の著作を『ほら話』と言うのは自由だが、いやしくも大学教授なら本を読んでから言ってるのだろうな。私も本で、愚かな指導者を批判している。それと戦争を煽った新聞も批判している。山口よ、本当に読んだのか!ところで山口にとっては、日本に生まれたことを感謝するのはいけないことなのか」(11月22日)

 確かに、戦後教育を受けた人は、日本人として主張すべきことも知らないし、国際水準において、国民として知っているべきだと常識的に考えられているような水準で日本の歴史を正しく語ることもできない。

 しかし、それでは、たとえば『日本国紀』を読んだ人が、その通り外国人に主張したりするのは、日本人は歴史修正主義者の集団かと思われて国益を毀損しそうだし、同書が翻訳されて外国人の目に触れるのも、あまり歓迎しない。

 やはり、私はもう少し常識的な、日本政府の公式見解を正しく反映し、国際的に理解を得られる説得力や客観性を担保する範囲で、自国に誇りを持ち、国益を対外的に適切に主張できるような歴史を日本人は学び、また発信すべきだと思う。
(文=八幡和郎/評論家、歴史作家)

※後編に続く

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