小笠原泰「日本は大丈夫か」

日産、ルノーが中国企業に全株売却で「中国企業化」シナリオも

日産の西川廣人社長(写真:ロイター/アフロ)

 今回の東京地検特捜部による“奇襲作戦”が、日産自動車と日本政府にとって果たして有利になるのかを検討してみたい。

今後の交渉にとって有効だったのか

 東京地検特捜部は11日、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏を会社法違反(特別背任)の罪で追起訴した。さらに同氏と法人としての日産を、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪でも追起訴。ゴーン氏の勾留は続いている。

 フランス政府代表としてルノーの取締役を務めるマルタン・ビアル氏とルメール経済・財務大臣の側近らが、日産や日本政府関係者と協議するため来日しているが、私企業の問題を超え、国家間の問題となりつつある。

 ゴーン氏は8日、拘留理由開示手続きで東京地裁の法廷に手錠と腰縄で姿を現し、「I am innocent」と無罪であることを強く陳述したが、国内向けには大したインパクトはないが、海外に向けては大きなインパクトがあっただろう。これは、裁判官へのプレッシャーとなるのではないか。その一方で、ゴーン氏側の準抗告が東京地裁によって棄却されたことで、拘留は長期化の様相を呈している。

 特捜部の期待される役割は、ゴーン氏を長期拘留して世間に向けて反論する機会を与えないことだろうが、今回のゴーン氏逮捕の本来の目的は、日産を表に立ててオールジャパンとしてルノーとの交渉を有利に運び、日産とルノーのアライアンスをひっくり返し、日産をルノーの植民地から解放し、再度独立させることだろう。しかし、それはかなり困難だ。日産のほうが販売台数や技術力の面で上回っているので独り立ちできるという見方もあるが、現在、全販売車両における共通パワートレインの使用率は3分の1であり、このシナジー効果を失うことは、ルノーばかりでなく日産にとっても大きなダメージである。

 もしアライアンスを解消すれば、株価は大きく下がるであろう。業績の大幅低下につながることは容易に想像できる。直近(1月11日)の日産の時価総額は3.8兆円で、これが市場の日産への評価である。ちなみにトヨタは21兆円、ホンダは5.3兆円だが、時価総額で上回るホンダですら単独での生き残りの難しさが指摘されるなか、日産が事実上傘下に収める三菱自と単独では、規模の面で、グローバル市場で生き残っていくのは難しい。

 一方、ルノーの時価総額は2.1兆円だが、ルノーにとってアライアンス維持は死活問題である。もし日産が業績上のデメリットを覚悟でアライアンスの解消を持ち出せば、ルノーは態度を硬化し、日産株の43.4%を有する大株主として株主利益維持のために最大限の介入を試みるであろう。それは、ルノーの大株主であるフランス政府が日産に介入することを招く。ルノーから多額な賠償請求を受けるリスクもある。日産はかつてルノーから8000億円近い支援を得たが、この20年近いアライアンスのなかでルノーにそれを上回る額の配当金を払っている。だが、“手切れ金”はその程度では到底すまない。

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