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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

2回目の米朝首脳会談へ…北朝鮮軍部内で非核化に不満充満、金正恩が中国を押しかけ訪問

文=相馬勝/ジャーナリスト

 それでは、なぜ金氏はこの時期に中国を訪問しなければならなかったのか。その理由のヒントが、朝鮮中央通信の報道に隠されている。それが以下の部分である。

「朝中両党、両国の最高指導者は、同志的かつ真摯で友好的な雰囲気のなかで再びあいさつを交わし、朝中両党、両国の親善と団結、交流と協力を時代の要求に即してよりいっそう強化し、発展させることについてと、互いに関心を寄せる国際および地域問題、特に朝鮮半島の情勢管理と非核化交渉過程を共同で研究、実行する問題に関連して、より深く、かつ、率直な意思疎通を行い、対外関係分野において両国の党と政府が堅持している自主的立場について相互理解と支持、連帯を表明した」

 さらに、同通信は金氏が習氏との会談で両国関係の発展とともに、「(米朝間の)非核化の交渉過程に生じた問題と懸念、解決の展望について述べた」と伝えており、今回の会談の最重要議題が第2回目の米朝首脳会談で協議する非核化の問題だったことはほぼ間違いない。つまり、第2回目の米朝首脳会談が近づいたことから、金氏が習氏に米朝首脳会談の協議内容を確認し、中国側の全面的なバックアップを得たいというのが、今回の訪中の最大の眼目だったといえる。

「腐敗との戦争」

 しかし、中朝間では朝鮮半島の非核化について、これまで3回の中朝首脳会談で合意済みだったのだが、なぜ金氏が改めてこの問題を習氏と話し合わなければならなかったのか。
 
 これについては、北朝鮮国内では軍部を中心に、先の米朝首脳会談で約束した「非核化」に強い不満を示していることがある。このため、金氏が軍幹部の腐敗問題の摘発を強化しているほどだ。

 これを裏付けるように、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は昨年12月10日付と同19日付の1面で、金氏が「腐敗との戦争」を宣言したことを明らかにしたうえで、「軍幹部のなかに利己主義と功名心、弛緩した思想観点が顕著に現れている」などと批判。さらに、同紙は「幹部が特権意識を持つとともに、派閥をつくって徒党を組み、不正腐敗行為を働いており、これらは国家に対する利敵行為と規定しなければならない」などと糾弾している。

 金秀吉・軍総政治局長も昨年末、平壌で開かれた記念中央報告大会で、「軍事政治活動で起きるすべての問題を党中央に報告し、党の命令指示に絶対服従する刃のような規律が確立され、特殊化と権力掌握、官僚主義、不正腐敗のささいな要素も踏みつぶすための闘争によって、軍の権威が蘇ることになった」と強調するなど、金氏の昨年1年間の最大の軍事的業績として「軍内の不正と腐敗の清算」を挙げているほどだ。

 これに加えて、金氏がわざわざ誕生日に中国を訪問して習氏と会談し、「朝鮮半島の非核化」を強調することで、特に軍部による国内の抵抗を抑える狙いがあったといえよう。

 また、今回の北京訪問では、軍をまとめる努光鉄・人民武力相(韓国の国防相に相当)が随行し、中国の魏鳳和国防相と会談しており、北朝鮮の非核化にともなう対北軍事支援を協議したとの情報も流れており、第2回の米朝首脳会談が間近に迫っていることを予感させている。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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