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岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

大ヒットの血液をサラサラにする新薬、米国で年3千件超の死亡例…評価論文に重大な誤り

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論文に重大な指摘

 ところが、この薬の発売直後から、「服用した患者に致命的な出血が起こり死亡」との報告が続々となされるようになりました。米国食品医薬品局(FDA)の集計によれば、ワルファリンについての米国での死亡例が年間1,106件であったのに対して、この新薬は3,781件にもなっていたそうです。製薬企業に対して次々に裁判が起こされ、その数が4,000件を超えました。受けて立った製薬企業は、総額650億円の和解金を支払うことで決着を図りましたが、自社の非を認めることはありませんでした。

 論文で発表されたデータと異なる出来事がなぜ起こってしまったのでしょうか。その謎は、ある論文によって解き明かされました【注2】。理由のひとつは、新薬とワルファリンを比べる際、「二重目隠し試験」の原則が守られていなかったということです。

 2つの薬の効果や副作用を比べる場合、錠剤の形状を揃え、どちらの薬を服用しているかを、患者に対しても、また医師に対しても二重に内緒にするのが原則です。この原則が守られないと、両者間に心理的影響の違いが生じる可能性があるからです。事実、この原則を守った調査と守らなかった調査で、同じ薬でありながら正反対の結果が出たという事例も過去にありました。

 この論文では、もうひとつ重大な指摘がなされました。やり玉に挙げられたのは、副作用としての脳出血が、新薬が0.5パーセントであったのに対して、ワルファリンのほうは1.5パーセントと3倍にもなっていた点です。しかしワルファリンは昔からあった薬ですから、さまざまな調査データも出揃っていて、脳出血の発生率はせいぜい0.28~0.45パーセントでしかないはずなのです。

 注1の論文で、なぜ1.5パーセントもの高い値になったのかを調べたところ、ワルファリンの血液検査がきちんと行われていなかったケースがたくさんあったことと、きちんと用量調整が行われた人たちだけを対象に分析をし直したところ、やはりワルファリンのほうで脳出血は明らかに少なくなっていたという、重大な誤りがわかったのです。

 その後に発表された最新論文では、やはり同じ目的で昔から使われてきたアスピリンに比べても新薬は劣っているか、あるいは差がないことが示されました。誤りを解き明かした研究者たちは、「ワルファリンの正しい使い方や副作用を人類が学ぶために50年もの歳月を要した」と述べています。新薬に踊らされている医師たちへの痛烈な批判でした。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)

参考文献
【注1】Connolly SJ, et al., Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 361: 1139-1151, 2009.
【注2】Dabigatran for atrial fibrillation, why we can not rely on RE-LY, Therapeutics Initiative, The University of British Columbia, Jan-Mar 2011.
【注3】Huang WY, et al., Association of intracranial hemorrhage risk with non–vitamin K antagonist oral anticoagulant use vs aspirin use. a systematic review and meta-analysis. JAMA Neurol, Aug 13, doi: 10.1001, 2018.

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