「平成」という時代がもうすぐ終わろうとしている。我が国の公債残高(国の普通国債残高)は1989年度(平成元年度)に161兆円であったが、30年後の2018年度(平成30年度)には5倍超の883兆円にまで膨張し、平成最後の予算編成(2019年度予算案)では、2019年度の公債残高が897兆円にも達するという状況である。
この897兆円という債務は、国の一般会計税収(約62兆円)の約14年分にも相当する。もはや、財政規律は崩壊しているといっても過言ではないが、それでも国の財政がまわっているのは、国債の大部分が国内で消化できているためである。
では、その限界はいつか訪れるのか。国債の資金調達に関する問題は、しばしばフローの変数である「経常収支」等との関係(フロー・ビュー)で議論されることが多いが、ストックの変数である「家計の純金融資産」等との関係(ストック・ビュー)についても理解を深める必要がある。これは、日銀の金融政策おいて国債の買いオペ等が長期金利に及ぼす影響について、政府部門が発行した国債残高のうち日銀が保有する国債残高(ストック)の割合が影響するのか、市場で売買される国債のうち日銀が買いオペ等で購入する国債(フロー)の割合が影響するのかという視点とも似ている。
「フロー・ビュー」の立場で国債の資金調達の限界を把握する一つのヒントになるのが、「一般政府部門」「企業部門(非金融法人)」「家計部門」「海外部門」の金融資産・負債の構造的変化である。一般的に資金の貸し手は家計部門であるが、図表1においても、金融資産と金融負債の差額である「ネット」で見ると、資金の貸し手は「家計部門」であり、その他の「一般政府部門」「企業部門」「海外部門」は資金の借り手となっている(注:国によっては海外部門も資金の貸し手になるケースもある)。
実際、2016年度末において、「家計部門」はネットで1475兆円(=1785兆円-310兆円)の金融資産超過である一方、「一般政府部門」はネットで711兆円(=1275兆円-564兆円)の金融負債超過となっている。同様に、「企業部門」と「海外部門」は各々、ネットで594兆円と324兆円の金融負債超過である。なお、「海外部門の金融純負債」は対外純金融資産を意味し、その値がプラスの値であるとき、日本は海外に対し金融負債よりも金融資産を多く保有している状況を表す。