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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

国債の国内消化の限界はいつ頃か

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 理由は単純で、企業は基本的に資金の借り手であり、「企業部門の金融純負債」はプラスの値であるが、これが大幅に減少すれば、国内生産が大幅に低下してしまうためである。また、「海外部門の金融純負債」(対外金融純資産)についても、今後、人口減少や少子高齢化が進む日本においては、国内投資よりも海外投資が増加する可能性も高いため、「海外部門の金融純負債」が大幅に減少するとも思えない。

 仮に「△最小値」がゼロ兆円のときは、「一般政府部門の金融負債<家計部門の金融純資産」という不等式が成立し、一般政府総債務の上限は家計金融純資産となる。すなわち、一般政府総債務は、家計金融純資産を超えてまで膨張することはできない。


 図表2は、1990年度(平成2年度)から2017年度(平成29年度)までの「一般政府総債務」や「家計金融純資産」の推移を示すものである。1990年度における家計金融純資産と一般政府総債務の差額は381兆円であったが、2017年度では226兆円まで縮小している。27年間で155兆円も縮小しており、年間平均6兆円程度のスピードで縮小してきたことを意味する。現状のペースで縮小すると、現在の差額(2017年度の226兆円)は約38年後の2055年度にゼロになってしまう。

 一般政府部門のうち、国の公債残高(国の普通国債残高)だけでも約900兆円があり、長期金利の1%上昇で、その利払い費は9兆円程度も増加する。その結果として、財政赤字(一般政府総債務の増加)が9兆円増えると、年間6兆円の縮小スピードは年間15兆円に加速する可能性がある。このとき、同様の前提で、現在の差額(2017年度の226兆円)は約15年後の2032年度にゼロになることも簡単に試算できる。

 もっとも、2025年には団塊の世代がすべて75歳以上になり、医療費介護費が増加すれば、財政赤字はさらに拡大するため、早ければ2020年代後半にも国債の国内消化が限界に達する可能性があるかもしれない。さまざまなシナリオを想定し、財政・社会保障の改革を進める必要があろう。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)

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