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NECの凋落…1万人削減でもまた削減、2千億円かけ赤字企業を連続買収に懸念広まる

文=編集部
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NECの凋落…1万人削減でもまた削減、2千億円かけ赤字企業を連続買収に懸念広まるの画像1日本電気本社ビル(「Wikipedia」より)

 日本電気(NEC)は2018年12月、デンマークのIT(情報技術)最大手であるKMDホールディングス(以下、KMD社)を、米投資ファンドから80億デンマーククローネ(約1360億円)で買収すると発表した。19年2月末に発行済み株式をすべて取得する。

 KMD社の業績は芳しくない。17年12月期の連結売上高は約960億円で、営業損益は9億円の赤字。18年12月期も営業赤字だったとみられる。

 KMD社は世界でも先進的なデンマーク政府のIT化において、実績を持つ。デンマークの中央政府向けITシステムで17%、地方政府向けで43%のシェアを握る。デンマークでは、税務などデータの省庁間の連携が進んでいる。NECはKMD社のソフトウェアが欧州の標準的なプラットフォームに育つと判断した。

 NECは18年1月、英国ITサービス企業のノースゲート・パブリック・サービシズ(以下、NPS社)を約710億円で買収したばかり。NPS社は、17年4月期決算が6億円の営業赤字、最終損益は61億円の赤字で、145億円の債務超過だった。

 そんな破綻寸前の会社を買収したのは、NPS社が政府や警察向けのセキュリティに強いソフトウェア会社だったからだ。犯罪事案管理プラットフォームは英国で29%のシェアを持つ。自動ナンバープレートの読み取りシステムや違反処理システムでは独占的な地位にあるという。

 KMD社とNPS社を買収した理由は同じ。NECは海外の政府部門や公共交通機関などを顧客とするITシステムを「セーフティ事業」と名付け、成長の牽引役に据えたからだ。18年3月期実績で500億円だったセーフティ事業の売上高を21年3月期に2000億円に引き上げる計画だ。

 KMD社とNPS社の買収は、この戦略に沿ったもの。NECはセーフティ事業を柱にしたビジネスモデルに転換しようとしているのである。

セーフティ事業を看板に育てる

 NECの01年3月期の売上高は5兆4097億円、営業利益は1851億円だった。ところが19年3月期決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益は前期比0.5%減の2兆8300億円、営業利益は同21.7%減の500億円の見込み。最盛期の01年3月期と比較すると売り上げ規模はほぼ半減。営業利益は3分の1以下にとどまる。

 リストラにメドをつけたことで、新野隆社長兼CEO(最高経営責任者)は成長戦略を打ち出した。海外企業のM&A(合併・買収)に2000億円を投じる方針だ。

 だが、NECは海外M&Aで失敗した苦い経験がある。1990年代に出資や融資を含めて2000億円を投じた米パソコン大手のパッカードベルは“負の遺産”となった。NECが2009年3月期の連結赤字が2966億円となった最大の原因が、パッカードベルの業績悪化である。

 それ以来、海外M&Aには慎重だったが、成長路線に戻すには海外でのM&Aしかないと決断した。海外でのセーフティ事業を成長の核と位置付け、KMD社とNPS社の買収に勝負を賭けた。赤字経営の両社が、NECの救世主となるのだろうか。

リストラを連発、看板事業がなくなる

 かつてNECは半導体で世界を席巻した。パソコンは国内シェアでトップを誇った。ところが、パソコンや携帯電話事業で敗走を重ね、本体から切り離すリストラを繰り返したあげく、看板事業がなくなった。

 16年4月、新野氏が社長兼CEOに就任した。18年1月30日、20年度までの中期経営計画を発表したが、人員削減などの構造改革に重点が置かれた。人員削減に踏み切るのは、01年から4度目となる。01年に4000人、02年に2000人削り、12年には1万人削減した。ハードウェアの技術者をソフトウェア分野へ配置転換して乗り切ろうとしたが、社員のスキルが合わず混乱した。

 一時期、世界一を誇った半導体は、10年に旧ルネサステクノロジと経営統合してルネサスエレクトロニクスとなり、NECは17年に保有株のほとんどを売却して撤退した。

 PC98シリーズで国内首位を走ったパソコンも、11年に中国・レノボの軍門に下った。14年まで国内首位だった携帯電話も、NECカシオモバイルコミュニケーションズに移行し、16年に解散した。インターネット黎明期からプロバイダー事業を先導したビッグローブは14年に売却した。

 車載用リチウムイオン電池市場でパナソニックに次ぐ売り上げ規模だった日産自動車との合弁会社オートモーティブエナジーサプライと、その電極を製造する子会社を18年3月、中国系ファンド・GSRキャピタルに譲渡した。家庭用小型蓄電池事業の終了も決めた。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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