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木村隆志「現代放送のミカタ」

『家売るオンナの逆襲』好調の裏に漂う日テレの“危うさ”とは

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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家売るオンナの逆襲』も一見トリッキーに見えて、その構成はかなりオーソドックスな作品。何でも書ける大石静があえてこの描き方をしているところに、マーケティング感覚の鋭さというより、日本テレビの焦りを感じてしまう。

作家性を重視した昨年は視聴率が低迷

 昨年を振り返ると、『水曜ドラマ』で放送された『anone』は坂元裕二、『高嶺の花』は野島伸司、『獣になれない私たち』は野木亜紀子。いずれも日本トップクラスの脚本家であり、「彼らの作家性を最大限に生かす」というコンセプトの作品だった。

「挑戦的で深掘りを目指した」という意味では『家売るオンナの逆襲』とは真逆であり、志は高かったのだが、前述したように視聴率は低迷。そこで、いったん志を引っ込めてマーケティング重視で過去作の続編を……という流れが見え隠れしている。

 そもそも『水曜ドラマ』は、あまり続編を制作しないドラマ枠。1991年10月のスタートから27年間で続編が制作されたのは、酒井法子主演『星の金貨』、中村雅俊主演『夜逃げ屋本舗』、東山紀之主演『平成夫婦茶碗』、綾瀬はるか主演『ホタルノヒカリ』、杏主演『花咲舞が黙ってない』の5作のみ。その他の98作は、すべて新作を放送してきただけに、「背に腹は代えられない」という心境ではないか。

 ただ、いずれも2作で終了(『新・星の金貨』は別の物語)。『相棒』『科捜研の女』『ドクターX~外科医・大門未知子~』などで高視聴率をキープするテレビ朝日の続編戦略にならって、3作目以降も制作していくのか? 当作に限らず日本テレビのドラマ戦略にもつながることだけに、今の段階から気になってしまう。

イケメンシフトとBLの偏った戦略

 日本テレビの焦りは、キャスティングからも散見される。仲村トオル、工藤阿須加、千葉雄大、鈴木裕樹、草川拓弥(超特急)に加えて、松田翔太を投入するなど、まさにイケメンシフトなのだ。

 さらに、松田と千葉のBL(ボーイズラブ)シーンもふんだんに盛り込まれている。女性の活躍をメインに据えつつ、実は「イケメンを詰め込んで女性視聴者を囲い込もう」という狙いだろうが、偏った戦略はドラマ性を奪ってしまう。

 それでも、「刑事、弁護士などの重いムードの作品がかぶってしまった」など、『家売るオンナの逆襲』には追い風が吹いている。だからこそ4話目以降はステレオタイプを逆手に取った見ごたえのあるストーリーを見せてほしいし、次作以降の『水曜ドラマ』は再び志の高い作品を見せてほしいと思ってしまう。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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