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ラファエル氏アカウント停止が契機に?「ユーチューバーは稼げる」という幻想の終焉

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転機は2012年のパートナー要件緩和

 
 城ノ下容疑者がYouTubeへの投稿を始めた2012年は、YouTubeパートナープログラムの要件が大幅に緩和され、誰もが動画をアップできるようになった年だ。つまり爆発的に増えた自称ユーチューバーの一人だった。また、YouTubeの親会社であるグーグルが各国・地域ごとのユーチューバーを管理する組織(MCN)を規定した年でもあった。投稿者が爆発的に増えたため、ユーチューバーの直接管理から各国・地域の間接管理に転換したのだ。それに伴って、広告料の適正な支払い事務、YouTube規約の遵守、著作権問題、登録者数や再生回数の不正操作の排除といった課題に対応するため、MCN機能を持つマネジメント事務所が登場した。

 それを機に、主要なユーチューバーはマネジメント事務所に所属し、収入の20%前後を手数料として支払うことになった。これに対して2007年のYouTube日本上陸の頃から活動していた初期のユーチューバーたちは、「それはないだろう」と自立することを協議した。それが2013年6月のUUUM(ウーム)株式会社の設立につながった。

 現在は東京・六本木に本社を置き、2017年8月に東証マザーズに株式を上場、従業員は234人、2018年5月期の年間売上高は117億3500万円となっている。同社設立の中核を担ってHIKAKINが最高顧問を務めているが、設立に参加した初期ユーチューバーは10人ほどとされている。

 2007年から2011年までのユーチューバーは、プロ野球球団でいう“生え抜きの1軍”のような存在で、所属していることに価値があるため手数料は取られない。2012年以後、「YouTubeは稼げるぞ」と参入してきた後続ユーチューバーのうち、YouTubeで生計を立てている人たちが1軍、生計は立てられないが上を目指す人が2軍ということになる。

 UUUMに限らず、GENESIS ONE、VAZといったMCNはおおむね同様の構造だ。つまり彼らは2軍のユーチューバーからの手数料で事業が成り立っている。それを煩雑な事務のアウトソーシング料、法的リスクの安心料と考えるか、手数料の名目で稼ぎをピンハネされていると考えるかは人によって異なる。

 城ノ下容疑者は2017年7月、UUUMから離れて「アンキャス」(サイト名は「Comodo」)というユーチューバーサポート事務所を設立している。ユーチューバーからネットベンチャーを目指したのかもしれない。

人気コンテンツはとっくにレッドオーシャン

 
 城ノ下容疑者がブレイクしたのは「アンパンマン」というキャラクターがあったからだ。世界的に人気が高いので、初期は人気が集中したが、あっという間に大勢のライバルが登場する。それは「ガンダム」でも「ドラえもん」でも同じことだ。
 
 有名で人気が高いキャラクターは登録者数を増やすのに手っ取り早い手段だが、差別化が難しい。つまり幼児向けアニメや玩具など人気コンテンツは、そもそもレッドオーシャンなのだ。FacebookやInstagramの定番であるグルメもの、料理や工作のレシピなども普遍的で参入が容易な点で共通している。

 もう一つの手法は下ネタ、噴飯もの(面白)、非常識・危険に挑戦することだ。そのような動画はどうしても過激になり、瞬発力は強いが継続しない「一発芸」になってしまう。ところが「一発芸」的な動画を投稿し続けるのは難しい。どんどん過激になっていって、自分でも収拾がつかなくなる。体力が持たないし、アイデアが枯渇する。最後は再生回数のために命を落とすことにもなりかねない。

 そのような傾向が世界的に広がっていたので、1月15日、YouTubeは過激な動画の掲載を禁止した。それを受けて、1月22日には登録者200万人超の仮面ユーチューバーラファエル氏のチャンネルがBANされ、ネットでは大騒ぎだった。

 ラファエル氏はそれをネタに新しいチャンネルを立ち上げ、たちまち50万人以上の登録があったという。これではモグラ叩きのようなもので、下ネタ、裸芸、自虐ネタは江戸時代から下品とされながら絶えることがないのと同じことだ。いつの時代にもあるのだが、とはいえ10年経てばユーチューバーもその分、年をとる。2030年にも同じことをやっていられるだろうか。

目指すべきは新しいジャーナリズム

 
 小学生に「なりたい職業」を聞くと、ユーチューバーが上位に入るというが、大人になるとだんだん現実的になっていく。「ユーチューバーになりたい」は、「野球選手になりたい」「宇宙飛行士になりたい」と同じといっていい。大学生や社会人にもなって、「ユーチューバーになれば簡単に何百万円も稼げる」と誤解してしまうことはないだろう。

 明確なエビデンスはないが、日本ではYouTubeで収入を得ているユーチューバーは約2万人、YouTubeと関連ビジネス(書籍、セミナー、映像制作など)で生計を立てているのは500人前後という見立てもある。稼げたのはアーリーアダプターだった生え抜きと要件緩和以後の1軍選手のみ。2軍選手のなかにもワンチャンスをつかめる人はいるだろうが、ほとんどはマグレだというのは、誰だってわかっている。

 もう一つ、YouTubeがいつまで続くか、技術革新のスピードは予断を許さない。ブログ、Twitterに回帰する動きもあれば、TikTok、Instagram、Vimeoといった新興サービスも利用者を増やしている。誰もが思いつくアイデアやコンテンツはすでにレッドオーシャンだ。ユニークなアイデアで切り開いたブルーオーシャンも、あっという間に参入者がひしめくようになる。「一発芸」「面白」「子ども向け」に限界が見えてきたからこそ、過激映像チャンネルがBANされ、ネットベンチャーに転身を図るユーチューバーが出ているとすれば、「YouTubeは稼げる」は都市伝説になりつつあるのではないか。

 一方、スマートフォンの高機能・高性能化、ネット回線の高速・大容量化で、リアルタイムで動画が中継できるようになっている。筆者も仕事柄、「ニコニコ動画」「LINEライブ」の記者と会見で出くわすことが増えてきた。週刊誌が突撃取材の動画をネットにアップするケースもある。これからのユーチューバーには、市民目線の映像で社会の深層をえぐること、すなわち新しいジャーナリズムを目指してほしいとロートルジャーナリストは思うのだ。
(文=佃均/フリーライター)

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