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小林敦志「自動車大激変!」

スズキ、ジムニーに加え新型ハスラー投入で「軽」大乱戦?eKワゴンとデイズは全面刷新!

文=小林敦志/フリー編集記者
スズキ、ジムニーに加え新型ハスラー投入で「軽」大乱戦?eKワゴンとデイズは全面刷新!の画像1スズキの「ジムニー」(「ジムニー | スズキ」より)

 1月に日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が18年12月の登録車と軽自動車のそれぞれ単月の販売台数を発表し、同時に18暦年での年間販売台数も確定した。

 軽自動車と登録車を合わせた、つまり名実ともに“18暦年に日本一売れた乗用車”は、本田技研工業(ホンダ)「N-BOX」で24万1870台を販売した。登録車でもっとも売れたのが13万6324台の日産自動車「ノート」なので、ノートに10万台強、軽自動車で年間販売第2位のスズキ「スペーシア」に10万台弱という、まさに大差をつけてN-BOXが“日本一売れたクルマ”となった。

スズキとダイハツの“軽自動車戦争”のゆくえ

 さて、暦年締めでの販売台数でもうひとつ注目なのが、スズキとダイハツ工業の軽自動車ブランド別販売トップ争い、つまり“SD戦争”の結果である。

 暦年締めで見ると、06年まではスズキが常勝ペースだったのだが、07年にダイハツがトップを奪うと、14年にスズキが一度トップに返り咲くものの、その後は再びダイハツがトップを獲り続け、18暦年もダイハツがトップとなった。

 ただし、スズキは新型「ジムニー」という最高の“人寄せパンダ”も加わり、18年後半の追い上げに勢いがつき、18暦年締めや暦年締め上半期販売台数ではダイハツがトップだったが、18事業年度締め上半期(18年4~9月)販売台数ではスズキがトップとなっている。さらに、18暦年締めでのダイハツとスズキの販売台数の差は約2.4万台だが、17暦年締め販売台数の差は約4.6万台だったので、ダイハツはトップの座を守ったものの、17年比でスズキとの差は半減している。

 こうなると気になるのが、18事業年度(18年4月~19年3月)締めでのSD戦争のゆくえである。たとえ、その差を17年比で半減させたとはいえ、残り3カ月でスズキがダイハツを抜き去るのはかなり厳しいといわざるを得ない。

 スズキは、18暦年後半にダイハツを猛追した。しかし、18年10月から12月のダイハツの追い上げのほうが、まさに“トップを死守するため”というオーラが伝わるほど激しいものであった。18事業年度の残りとなる1月、2月、3月も、SD戦争がそれこそ“仁義なき戦い”ともいえる大激戦になるのは確実だが、18事業年度での18年4月から12月までの累計販売台数では、ダイハツが約1万台差をつけてトップとなっている。かなり微妙なところであるが、18事業年度締めでの年間販売台数トップもダイハツが逃げ切るようにも見える。

 ただ、スズキは18年12月20日にスペーシアの派生モデルともいえる「スペーシア ギア」を発売している。スズキのニュースリリースによると月販目標台数は2000台なので、このスペーシア ギアが大化けすればもちろん、目標通りに売れたとすれば、ダイハツを抜き去りスズキがトップとなる可能性も十分にある。そのため、ギリギリのタイミングまで、この両メーカーの動きからは目が離せそうにない。

 19年度に入ってからもしばらくは、両メーカー共に目立った新型軽自動車の登場予定はない。そのため、当面は既存車の販促活動を積極化するのがメインとなり、両メーカー共にライバルの動向を見ながら自社登録(軽自動車は届け出)による販売台数の上積みでトップを狙ってくることが考えられる。

消費増税が軽ユーザーの需要を直撃か

 ターニングポイントは暦年、事業年度共に後半にやってくる。暦年では、10月に予定されている消費税率の引き上げである。今のところ、今回ばかりは政府が税率を引き上げるのはほぼ確定的ながら、見送りについても予断を許さない状況となっている。

 軽自動車ユーザーの多くは、維持費の安さなどの経済性を重視して乗っているため、消費税引き上げによる需要の落ち込みは登録車以上になるともいわれている。予定通り10月から引き上げとなれば、19年10、11、12月の販売台数が落ち込むのはわかりきっていること。つまり、9月までに各ディーラーに課されている19暦年締め目標販売台数をクリアしておかなければ、前年同期割れは避けられない。

 当然、9月まではスズキとダイハツのデッドヒート状態が続くが、そのなかでも、たとえば“用品5万円分サービス”などのメーカーインセンティブ、そして自社登録による販売台数の積み増しでどこまで無理をしてくるかが勝敗を分けそうだ。

 さらに、19年3月に三菱自動車「eKワゴン」と日産「デイズ」のフルモデルチェンジが予定されている。このタイミングでのモデルチェンジは19年度に入ってからの販売促進を視野に入れており、この2車のモデルチェンジがスズキとダイハツをさらに刺激するのは間違いないだろう。

 ホンダも初夏あたりに「N-WGN」のフルモデルチェンジを予定しており、消費税引き上げ直前のタイミングでスズキとダイハツにプレッシャーをかけてきそうである。

 事業年度締めでは、20年の東京オリンピックの影響で規模縮小や会場の分散など、いずれにせよイレギュラーなかたちにはなるものの、10月下旬に開催される東京モーターショーがキーポイントとなるだろう。おそらく、そこで19年末に正式デビュー予定とされているスズキの次期「ハスラー」が参考展示される可能性が高い。

 スズキがダイハツに奪われていた暦年締めブランド別販売台数で14年にトップに返り咲いたのは、現行ハスラーがデビューし、たちまちブレイクしたことが大きく貢献しただけに、2代目ハスラーも自身のブレイクだけでなく、ほかのスズキ車の販売を盛り上げる“活力剤”としての効果も期待されているはずだ。

 一方で、ダイハツも黙って見ているわけではない。軽自動車規格の新規クロスオーバーSUV(スポーツ用多目的車)の投入が予定されているともいわれており、デビューのタイミングもハスラーとバッティングしているとされている。この新規SUVも、実際にデビューするならば東京モーターショーで参考展示されることは必至。東京モーターショーの会場で、スズキとダイハツが正式デビュー前の“前哨戦”を展開してくる可能性は高い。

 10月の引き上げで消費税は10%となるので、今まで以上に新車販売へのダメージは大きいのではないかとされている。また、10月1日より登録車の自動車税が恒久的に減税されるので、軽自動車のメリットが薄れることにもなる。

 次期型ハスラーダイハツの新規軽SUVは、そのような状況下でお客を店頭に引き込む重要なツールとなる。仮に両車が同時期(19年末)にデビューするとなれば、年明け、つまり20年1~3月は、どちらのモデルがより店頭にお客を多く引き込める魅力を持っているかが試される。そして、そのゆくえが19事業年度締めでのSD戦争の勝敗を分けそうである。
(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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