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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

日産、エンジニア「モノづくりの楽しさがない」発言の深刻さ…ゴーン改革の大きすぎる傷

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer

 さらに深刻なことは、エンジニア・サイドの問題である。エンジニアの夢といえば、自分たちが理想とする自動車を、なんの制限もなく一からつくり上げることと想像されるが、プラットフォームの共通化は、こうしたエンジニアの理想とは対極にあるということだ。もっとも、たとえばマツダの場合は、プラットフォームの共通化において、車種ごとの個性や多様性に対応できるように変動可能な要素を残しているようだが、それでもなお制限が加えられることに変わりはない。結果、日産のエンジニアのように、多くの開発者は「モノづくりの楽しさがなくなってしまった」と感じていることだろう。

 加えて企業における過度のマーケティング偏重も、時として問題になるかもしれない。 商品の開発や販売などを含むマーケティングにおいて、顧客志向の重要性がしばしば指摘される。それは確かに真理だが、過度の顧客志向はエンジニアを受動的、保守的にさせる危険性がある。情熱のないつくり手から顧客が感動するような商品が生まれるとは到底考えられない。

高競争時代の商品開発

 日本に加え、欧米、さらには中国やインドからも競争力のある自動車メーカーが出現しつつある現代の自動車市場においては、熾烈な競争が繰り広げられている。こうしたなか、低価格は重要な要素であるものの、安全や環境対策など、自動車の開発には以前にも増してコストがかかるようになってきている。

 こうした状況において、プラットフォームの共通化が進展することは理解できる。しかしながら、その結果、似たような自動車ばかりになってしまったならば、消費者の購買における決め手は低価格のみとなってしまう。

 トヨタ自動車がレクサスに注力する理由は、もちろんこうした事態を見越してのことだろう。

 今回のケースを通じて、モノづくりにおける「コスト、顧客志向、つくり手の想い」という3点を検討したが、これらのうち、もっとも後回しにされがちで、かつ極めて測定しにくい「つくり手の想い」のマネジメントは、価格における優位性が乏しい日本のモノづくりにおいて、極めて重要なポイントになるのではないか。
(文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer)

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