LINE、韓国・親会社ネイバーの意向で急速に金融会社化…採算度外視で赤字転落、懸念も

LINE本社が入居しているJR新宿ミライナタワー(「Wikipedia」より)

 対話アプリ大手、LINEの先行きに対する評価が分かれている。1月31日に発表した2018年12月期連結決算は最終損益が37億円の赤字(17年12月期は80億円の黒字)となった。スマートフォン決済サービスなどの金融事業を拡大するための先行投資が膨らんだことが大きな要因だ。

 短期的な収益を度外視して事業基盤の構築を急ぐが、金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックをめぐる競争は激化の一途にある。LINEの金融事業の収益化のハードルは高い。

 18年11月27日、みずほフィナンシャルグループ(FG)と提携し、19年にもLINE銀行を設立すると発表した。スマホ決済も、国内100万カ所という目標を11月までに達成した。

 その一方で、収益の柱である対話アプリを基盤としたゲームや広告の伸びは鈍化している。金融事業への投資は膨らんでおり、当面、赤字は避けられない。

 LINEが掲げる未来像と、業績の伸びの鈍化とのギャップに悩む投資家が増えている。

LINE銀行

 LINE銀行は、LINE Financialとみずほ銀行の共同出資。資本金及び資本準備金は計20億円、出資比率はLINEの子会社が51%、みずほ銀行が49%。19年春にも「LINE Bank設立準備会社」を立ち上げ、20年の開業を目指す。

「5年後を見据えた新しい銀行サービスをつくる」

 18年11月27日の記者会見で、LINEの出澤剛社長はこう抱負を語った。「いろいろ規制があるなかで、まだまだ改善の余地がある」と、既存の銀行との差別化を追求する構えだ。

 保険や証券、ローンなどさまざまな金利サービスをLINEペイとつなぎ、利用しやすくするのが狙い。

 LINEは18年6月、野村ホールディングス(HD)とLINE証券を設立したほか、同年10月には損害保険ジャパン日本興亜と共同でコミュニケーションアプリ「LINE」から加入できる「LINEほけん」を始めた。既存の金融機関との連携で金融事業を拡大している。

 さらにLINEは1月30日、野村HDとブロックチェーン事業で資本業務提携すると発表した。LINE子会社で仮想通貨を展開しているLVCの第三者割当増資を野村が引き受ける。ブロックチェーンは取引データを分散管理する技術だ。これを使ったサービスの中身を詰め、最終契約を3月末までに結ぶ。

 LINE銀行の具体的な事業内容は明らかになっていないが、国内で約7800万人が利用する「LINE」の膨大な顧客との接点を生かした送金や融資事業などが想定される。

 みずほFGは与信リスクの管理やマネーロンダリング(資金洗浄)への対応などでサポートする。みずほFGの岡部俊胤執行役員副社長は「我々にないスピードやチャレンジなど(LINEの)カルチャーを取り入れていきたい」と述べた。

先行投資が重荷で最終赤字に転落

 コンビニエンスストアやファミリーレストランでスマホ決済サービスの導入が相次いでおり、LINEペイの導入が目立つ。

 阪急阪神百貨店は、18年8月から百貨店では初めてLINEペイのコード決済を導入した。神奈川県は自治体で初めてLineペイで税金を支払えるようなシステムを導入する。

 スマホ決済はLINEのLINEペイ、楽天の楽天ペイ、電子決済サービスベンチャーOri gamiのOrigamiペイなどが先行していた。18年にNTTドコモのd払い、アマゾンジャパンのAmazonペイ、ソフトバンクとヤフーのPay Pay、ローソンが手掛けるローソンスマホペイ、丸井グループのEPOSペイなど、大手企業の新規参入が相次いだ。KDDIは19年4月にauペイの開始を予定している。

 スマホ決済市場は、23年度には8兆円に拡大すると予測されている。バスに乗り遅れるなとばかりに各社は一斉に走り出し、スマホ決済は百花繚乱の様相だ。緒戦の陣取り合戦で勝負がつく。

 LINEは18年6月、クレジットカード会社のジェーシービー(JCB)と組んでスマホを読み取り端末にかざして決済できるサービスを始めた。LINEペイの口座にチャージしておけばアプリを立ち上げなくても決済できる。

 JCBクイックペイの加盟店は72万カ所ある。追加の設備投資なしでLINEペイを導入できる。当初2万カ所にすぎなかったLINEペイは、利用店を18年に一気に100万カ所に増やした。

 LINEはフィンテックとAI(人工知能)を戦略事業に掲げ、18年に計300億円を投じた。フィンテック事業の柱がLINEペイである。

 LINEの18年12月期連結決算(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前年同期比24.0%増の2071億円と過去最高になった。しかし、営業利益は35.8%減の161億円(17年12月期は250億円)と大きく落ち込んだ。最終損益は37億円の赤字に転落した。

 LINEは事業を「コア事業」と「戦略事業」に分けている。

 対話アプリ「LINE」に関連するコア事業の売上収益は19.6%増の1783億円。広告収入が増えたことが寄与した。だが、採算の良いアプリ内で使うスタンプやゲームの収入が減り、広告のシステム投資がかさんだことから営業利益は265億円と22.4%減った。

 スマホ決済を中核とした金融サービスや音声AIの戦略事業の売上収益は287億円と60%増えた。スマホ決済を導入する店舗や利用者を増やすための費用が重荷になり、営業赤字は349億円と17年の170億円から2倍となった。コア事業で戦略事業の巨額赤字を補えなかったことが最終赤字に転落した原因だ。

 LINEは対話アプリからプラットフォーム(基盤)へと軸足を移してきており、事業領域ではフィンテックやAIに投資を拡大している。

 出澤氏は、1月29日付日経産業新聞のインタビューで、「収益よりまず利用者集め」として、「フィンテックは2~3年、AIは5年後のスパンで考えている」と語っている。つまり、3~5年は赤字覚悟で投資を続けるということだろう。

 LINEが利益を度外視した投資を続ける理由は、親会社の韓国検索最大手ネイバーの意向が働いている。LINEは18年9月に新株予約権付社債(転換社債CB)を発行し、19年から21年の成長事業への投資資金1480億円を調達。その約半分をネイバーが引き受けた。

みずほという大きな後ろ盾

 信用力が欠かせない金融サービスにおいて、みずほFGがサポートするメリットは大きい。とはいっても、新しい金融サービスをスタートさせればコストはさらに増大する。

 出澤氏は「カンパニー制を導入し、各カンパニーの経営者たちが新たなサービスを作っていく」(日経産業新聞より)と強気だ。

 同氏は戦略事業で18年12月期は300億円の営業赤字(1~9月で228億円の営業赤字)までを許容範囲としてきたが、実際の赤字は349億円となった。

 戦略事業への投資は親会社頼み。こうした姿勢で“金の卵”を産むことができるのだろうか。いつ黒字転換するのか。市場はかなり懐疑的だ。

 LINEは2月28日、LINEペイに200億円を追加出資する。従来の資本金は36億円だった。競争が激化しているスマホ決済の顧客の囲い込みのために新たな還元策を検討するほか、人材の確保に資金を生かす。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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