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“平成の市町村合併の優等生”兵庫県篠山市は、なぜ存亡の危機に陥ったのか?

文=小川裕夫/フリーランスライター
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丹波市の誕生という大誤算

 そうした財政的な危機もさることながら、04年に篠山市に暗雲が立ち込める。隣接する氷上郡6町村が合併。新たな市名を丹波市にしたのだ。篠山市は江戸時代に城下町として栄え、今でも古い町並みを残す。そうした情緒あふれる雰囲気が観光客を引き寄せている。また、市の名産品である黒豆は、全国で「丹波の黒豆」として人気で絶大なブランド力を誇っているが、丹波市の誕生で観光客が奪われる事態にまで発展。丹波の黒豆は丹波市の名産品と勘違いされるようになった。総務省の職員はいう。

「地名によるブランドイメージが農産品や観光を大きく左右することはあります。総務省も問題を認識していますが、国から市町村に対して『その名称を使うな』と禁じることはできません」

 全国各地にある市町村は、町村ならばすでに存在するものと同じ名称を用いてもよいとされている。一方、市の場合は原則的に同名市が認められていない。唯一の例外は、東京都と広島県に存在する2つの府中市だ。どちらの府中市も1954年に市制を施行。ほぼ同着での市制施行のため、例外的に両者を認めることになった。府中市のケースを除けば、原則的に先に名乗っている市が存在する場合は、その市にお伺いを立てて許可を得なければならないとされる。

 周辺5町が合併して2006年に誕生した福島県伊達市は、先行した北海道伊達市から許可を得ることに成功した。しかし、そうしたケースは稀で、沖縄県平良市・城辺町・下地町・上野村・伊良部町は合併で誕生する新市名を島の名称から「宮古市」にしようとしたが、岩手県宮古市から拒まれたことで断念。宮古島市として発足した。

 丹波ブランドを収奪された篠山市は、このほど市名を改称する住民投票を実施。その結果、篠山市から丹波篠山市に市名を改称することが決まった。篠山に丹波を冠することで、丹波市と重複しない。これなら先行する丹波市と協議する必要はない。それでも、再改称するので二度手間になる。また、改称費用も決して安くない。

“合併の優等生”と持て囃された篠山市は、合併後に合併特例債の重荷に苦しみ、そして今、市名争奪戦でも苦しい立場にある。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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