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ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~一極集中を裏で支える東京の本当の実力

東京23区、大規模スーパーが出店しても近くの商店街がシャッター通り化しない謎と答え

文=池田利道/東京23区研究所所長
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 全国の商店街が「シャッター通り化している」といわれるなかで、ひとり気を吐いているのが東京の商店街だ。銀座、表参道、浅草、かっぱ橋などといった特殊な商店街だけではない。日常の買物需要にこたえる「近隣型商店街」も、東京では今なお活況を呈しているところが少なくない。

 2016年度の「東京都商店街実態調査」によると、23区には1942の商店街があるそうだ。人口10万人当たりに換算すると、およそ21カ所。ちなみに、多摩地域は同じ人口10万人当たり約14カ所。中小企業庁の「全国商店街実態調査」による全国平均値は10万人当たり約12カ所なので、多摩地域は全国平均と大差ないが、23区には商店街が突出して多いことになる。

 14年の「商業統計調査」からも、東京の商店街の力が垣間見えてくる。図表1は、一般的な商店街での買い物とは購買動機が違う百貨店と、販売形態が異なる無店舗販売(通販など)を除いた業態別の販売額構成比を求めたものだ。23区ではスーパーマーケットのウエイトが低く、専門店のウエイトが高いことがわかる。一方、東京都多摩地域と埼玉、千葉、神奈川の各県をあわせた首都圏近郊部では、全国平均以上にスーパーのウエイトが高く、専門店のウエイトが低い。これは、専門店が集まった商店街パワーの強さが23区に特徴的な傾向であることを示す傍証にほかならない。

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「東京の」あるいは「首都圏の」商店街が活力を保っているのではない。「23区の」商店街だけが特別に元気なのだ。

「郊外の大規模スーパーが原因」という嘘

 23区の商店街が元気を保っている理由として、「地価が高い東京では、大きな駐車場を備えた大規模スーパーが出店しにくいからだ」という説がある。だが、これは事実ではない。

 23区の専門店(すなわち、専門店の集合体である商店街)は大規模な総合スーパーとの競合以上に、食品スーパーをはじめとした専門スーパーとの競合に勝ち残っている。そもそも、メディアも識者も口を揃えて主張し、その結果、誰もが疑いを持たない「郊外部への大規模スーパーの出店が商店街のシャッター通り化を進めた」という考え自体に誤りがある。

 総合スーパー(あるいは総合スーパーを核店舗とした大規模なショッピングセンター)は、なるほど目立つ存在ではあるが、数が限られるため、その影響力はさほど大きなものではない。もう一度、図表1に戻ってほしい。総合スーパーの販売額シェアはたかだか5%ほどで、コンビニエンスストアよりも小さい。

 さらにいえば、総合スーパー(GMS:General Merchandise Store)は、その名が示す通り、消費者のワンストップ購買ニーズへの対応を大原則とする業態であり、基本的に人が集まりやすい場所を最適立地とする。その代表が駅前だ。たとえば、JR総武線での筆者の帰路ルートをたどると、新小岩駅前に西友が、小岩駅前にイトーヨーカドーが、市川駅前にはかつてと比べ規模は縮小したがダイエーが、船橋駅前にイトーヨーカドーが店を構えている。読者が住むまちの駅前にも、総合スーパーがあるのではないだろうか。

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