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木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ「レクサス」、ニューヨークに“クルマがない”情報発信拠点を構えた狙い

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レクサス「インターセクト」の店舗

 レクサスが世界各地での出店を進めている「インターセクト」の3号店が2018年11月、米ニューヨークにオープンした。場所はマンハッタンのチェルシー地区。

 数年前、その辺りを散策したときの印象は、それほど良くはなかった。カフェやショップも少なく、とても栄えているとは思えないエリアだったからだ。ちょっと物騒な雰囲気が漂っていたから、夜の独り歩きをする勇気もなかった。街をよく知るニューヨーク在住の友人のエスコートに頼って、クルマで通り過ぎるのが精一杯の街。チェルシー地区にはそんなネガティブな印象しかなかった。

 だが、今訪れてみると、がらりと様変わりしていることに驚かされた。お洒落なファッションマーケットや、世界的ブランドショップが軒を連ねる。まだ発展途上だとはいうものの、高感度なニューヨーカーが闊歩する街に変貌していたのである。そこにレクサスは目をつけ、「インターセクト バイ レクサスNYC」を開店したのである。

 そもそも「インターセクト」とはなにか。レクサスがブランド構築するための、いわば情報発信基地である。

 プロジェクトによれば、世界の主要都市に展開予定とのことで、1号店は東京・青山。2号店はドバイ。そして3号店が今回オープンしたニューヨーク店である。

 ただし、いわゆる地方の県や町が、ふるさとの特産物や観光地を広めるために出店する情報発信基地(アンテナショップ)とはまったく違う。レクサスが100%企画運営するとはいっても、セールスマンが車両説明するわけではなく、普段はクルマも展示していない。いわばカフェスタイル。昼間は、アパレル関係や代理店関係など、時代の先端を行くお洒落なニューヨーカーがのんびりお茶をしたりビジネスミーティングをしたりする場なのだ。夜になれば、高級ディナーを口にすることができる。

 店舗デザインは、インテリアデザイナーの片山正通氏が手がけた。食事やカフェはそれぞれ特色を出しているものの、デザインは世界統一だ。壁一面にホワイトに塗られたパーツが埋め込まれていたり、43分の1レジントップのミニカーがトイレの壁を埋めつくす。決して販売ディーラーなどではないが、クルマ好きにはたまらない。クルマ好きでなくとも、そのアート感覚に痺れることだろう。

 高感度層をターゲットとしているのは、トイレが男女で分かれていないことでもわかるかもしれない。ニューヨークではいま、男女兼用のレストルームが最先端なのだ。それだけを聞けば、誰もが「後進国じゃあるまいし」と驚くことだと思う。その気持ちもよく理解できる。


 だが今、ニューヨークはジェンダー・ニュートラルが最先端。身体と性別が異なるインターセックス、Xジェンダー、LGBT、つまり女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、トランスジェンダーである。人として性の多様性を認めようという考えが支配的なのだ。

 先日、体調不良でニューヨークのクリニックを受診したとき、問診表の性別欄には3つの選択肢があった。「男性」「女性」「その他」である。日本では「男性」か「女性」しか記入欄がないが、ニューヨークではそれがポピュラーになりつつある。


「インターセクト バイ レクサスNYC」のレストルームは、さすがに完全な男女兼用ではなく、手洗い場だけが共用のセミジェンダーのスタイルだったが、そこにブランドの先端を突き進むレクサスの感度の高さをうかがわせたのだ。

 ニューヨークを訪れた時には、ぜひ一度足を運んでみるといいだろう。レクサスの最先端のスタイルと、ニューヨークの今を感じることができるかもしれない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員
「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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