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「北朝鮮は地上の楽園」…日本最大のタブー、在日朝鮮人の帰還事業の60年目の証言

構成=長井雄一朗/ライター
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 その後、在日女性文学誌『地に舟をこげ』に編集委員として7号の終刊までかかわりました。在日女性史上、在日女性たちの力だけで編集、発行し書店に並ぶ文芸誌を発刊したのは『地に舟をこげ』誌が初めてでした。

地域住民として生きる

 私に市民意識が芽生えたのは、地域女性史を学び、聞き取り調査にも参加するなかで、地域の女性たちと「共生」することの意味を知ったからです。そして、在日の私が一市民として街づくりにどのようにかかわっていくのか、ということが課題となって見えてきたのです。

 1994年から1996年まで、調布市の女性問題広報紙『新しい風』の編集委員を務めながら、「隣の国の女性たち」というコラムを9年間連載することになります。また、市の推薦により1998年から1999年まで調布市の「まちづくり市民会議」の諮問委員を2期歴任しました。

 2001年には「異文化を愉しむ会」を発足させ、今年で18年になります。文化の違いが差別というマイナスイメージでなく、プラスのカルチャーとして日本社会に順応できればとの思いで活動しています。

 今、朝鮮半島が大きく変わろうとしています。死語となって久しい「統一」という言葉が、夢ではなくわずかに現実味を帯びてきました。しかし、母国がどのように変わろうとも、「在日」は日本に生きざるを得ない日本の地域住民です。母国の平和的な統一を念願しつつも、母国の事情によって「在日」が生きづらい社会になることだけは絶対に望みません。

 これは、在日コリアンの多くの人たちの考えだと私は思っています。本国との交流や接点を大切にしながらも、本国政府に従属するのではなく自立した在日民族として日本社会に参加し,地域住民として共生共存していくことが私たちの課題ではないかと思っています。次世代に受け渡すべく在日の遺産づくりのために地域の人々と手を携えながら、日本の地にしっかりと根を張って生きていきたいと思います。

今の北朝鮮に沈黙するリベラル層への憤り

 最後にもっとも言いたいことがあります。かつて韓国が軍事政権だった時代、日本の左派や進歩的文化人が「韓国の民主化運動のために韓国民衆と連帯を組もう」と論陣を張り、世論を喚起していました。

 しかし、その方々は北朝鮮の人権問題や暗部については「北朝鮮を貶めることだ」として関与しない姿勢を取っています。脱北者の問題もしかりです。今こそ、北朝鮮の過酷な人権弾圧について、左右の対立を超えて民主化への連帯を深めていくべきです。今も、北朝鮮に帰国した友人・知人たちが厳しい監視と、激しい差別の下で呻吟している姿が浮かびます。

 私は行ったことはないのですが、友人・知人が親族訪問で北朝鮮へ行っています。その話を聞くたびに、ひどいことだと思います。なぜ、人権無視の国に対して左派や進歩的文化人が沈黙しているのか。せめて、当時の南の民主化運動の盛り上がりと同様の運動が日本で起きてもいいのではないでしょうか。

 これは、拉致問題にもつながる問題です。どんな理由があっても、拉致はあってはならないことです。その拉致問題に対しても左派や進歩的文化人が沈黙しているのは、ダブルスタンダードにほかなりません。
(構成=長井雄一朗/ライター)

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