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フジ『科捜研の男』あり得なさすぎの展開がサイコパス&コントの領域で逆に面白い

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 関ジャニ∞・錦戸亮が主演を務める連続テレビドラマ『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)の第8話が25日に放送され、平均視聴率は前回から0.1ポイント減の9.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 このドラマは、陰惨な過去を持つ科捜研法医研究員・真野礼二(錦戸)が、現場に残された痕跡をもとに事件の真相に迫るサスペンス。新人の法医研究員・沢口ノンナを新木優子が、捜査一課のベテラン刑事・虎丸良平を船越英一郎が演じる。

 基本的には1話完結の警察ドラマだが、真野の家族全員が死亡した「武蔵野一家殺人事件」が縦軸となっている。真野は、自身の兄が家族を殺した末に自殺したとされるこの事件の真相を疑い続けているのだ。

 この縦軸ストーリーは第6話で一気に進展し、次週でさらに真相に迫るかに思われた。ところが、第7話は前週の出来事がまるでなかったことかのように一話完結ストーリーに逆戻りし、視聴者の失望を買った。次こそは進展するか、と第8話に期待が高まったが、結果は第7話と同じ。「武蔵野一家殺人事件」などなかったことかのように、ほぼ無名の若手俳優たちによるお粗末なストーリーを繰り広げ、さらなる失望を集めるだけに終わった。

 若手俳優たちに責任があるというのではない。この回のキーパーソンとなった石井杏奈に対して、ネット上で「下手くそ」との声がちらほら見受けられたのは確かだが、素人演技で見ていられない、というほどではなかった。むしろ、問題は脚本と演出にある。

 この回のプロット自体は、「児童施設でともに育った幼なじみが、友だちを守るために罪を犯してしまう」というもので、ありがちではあるが決して悪くはなかった。親もきょうだいもいない彼らが、同じ施設で育った仲間に家族以上のきずなを感じるのは想像に難くない。仲間のためにやむを得ず犯罪に手を染めてしまうという物語は、刑事ドラマの王道パターンのひとつである。

 ところが今回の脚本は、こんな王道ストーリーをツッコミどころ満載のバカドラマに仕上げてしまった。ストーリーの詳細は省くが、ハタチそこそこと思われる若者2人が月30万円ものお金をゆすられて素直に払い続けたという設定もそのひとつ。警察に通報すればすぐに終わったのに、なにをバカ正直にお金を払っているのかとあきれてしまった。

 結局、彼らはお金を払い続けるのが困難になってしまい、ゆすりの張本人を刺してしまう。人殺しするくらいなら警察に行けばいいのに。刺された悪者は後から息を吹き返し、弟を呼ぶ。といっても助けを呼んだのではない。自分を刺した奴への復讐を依頼したのだ。いや、その前に救急車呼べよ。兄を助けることなく、素直に復讐を果たす弟も常軌を逸している。

 この後も、刺されて瀕死の状態の人物がそこそこ元気そうに延々としゃべるなど、無理のある展開が続出。その一方で、石井杏奈演じる人気女優は自分のせいで幼なじみの1人が死に、もう1人が刑務所行きになったにもかかわらず、軽い感傷に浸ったくらいで吹っ切れ、何事もなかったかのように芸能活動を続けるというサイコパスぶりを発揮。普通にやればお涙頂戴の「いい話」でまとまるストーリーを、よくもここまでダメにできたものである。

 事件の真相解明を、長尺の回想映像と真野の語りで済ませた演出も単調すぎた。そもそも、事件関係者に真相を語って聞かせるのは科捜研の仕事か、と言いたい。今回は科捜研らしい仕事もほとんどしておらず、科捜研が舞台になっている必要性もほとんどなかった。これでは、「科捜研の元研究員の原作を映像化した」というこのドラマの触れ込みも空虚に聞こえる。

 6話から「武蔵野一家殺人事件」の真相に迫る新章に突入するとあおっておきながら、7・8話と2週続けてほぼスルーしたことで、視聴者からの不満も大いに高まっているようだ。最後まで謎を引っ張って視聴者をつなぎ止めようとの作戦が裏目に出なければ良いが。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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