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小谷寿美子「薬に殺されないために」

市販薬の胃薬、個人の判断で服用は危険…かえって治療の妨げ、副作用で苦しむ可能性も

文=小谷寿美子/薬剤師
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(1)同士は重ねて飲むことはできませんが、(1)と(2)は重ねて飲むことで「胃もたれ」に対して、より効果が高まります。胃もたれは胃の中に食べ物がいつまでも入っている状態です。その食べ物を消化酵素で分解して蠕動運動で素早く十二指腸へ送ってしまえば、胃の中の食べ物がなくなります。そのため(1)と(2)は重ねて飲みます。

 また、仕事でプレッシャーを感じて胃がキリキリと痛むような場合は、守りの薬を使います。過剰なストレスで胃酸の分泌が増えてしまい、自身の胃を溶かしている状態です。実際には胃酸を抑える薬と、粘液を増やす薬をそれぞれ使います。そのため、2種類の「胃薬」を飲むことになります。しかし、胃酸を抑える薬は1種類だけにして、重ねて飲むことはしません。

 年を重ねると、なんとなく胃が弱ったと感じることがあります。今まで余裕で食べられた食べ物がきつくなってくるのです。すべての機能が落ちてくるのです。蠕動運動が落ちてきます。また、胃の入り口のしまりが悪くなってきます。粘液を出す機能が落ちてきます。胃の入り口がしまらないと胃酸が食道に逆流してきてしまい、なんとなく胸焼けが続いている症状が出てきます。これを専門用語で逆流性食道炎といいます。もしこの診断が出てしまったら市販薬では対応できないので、受診をしてください。また、蠕動運動と粘液を増やす市販薬は販売されています。

安易に市販薬を使ってはいけないケース

「病院で胃薬をもらっているんですが効かないので、市販薬で何かないでしょうか?」

 そのような質問をよく聞きます。どの薬を飲んでいるか尋ねてみると、「ネキシウム」と答えてくれます。この薬は逆流性食道炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療薬で、胃酸が出るのを強く抑える薬です。もちろん市販薬ではなく処方箋医薬品です。ここまで強い薬が処方されていれば、市販薬でできることはありません。このように私たち薬剤師に質問してくれれば、きちんとお答えするのですが、個人の判断で「太田胃散」や「第一三共胃腸薬」などを飲んでいる方も多いのではないでしょうか。たとえば「太田胃散」の添付文書には、医師の治療を受けている人は相談するよう注意書きがあります。個人の判断でこっそり飲まないで、医師や薬剤師にぜひ相談してください。

「太田胃散」の成分は、大きく分けて3つあります。生薬、制酸剤、消化酵素です。生薬は蠕動運動を活発にする効果があります。制酸剤は文字通り、胃酸を制御する薬です。消化酵素には食べ物を溶かす効果があります。

 すでにネキシウムが処方されているのに太田胃散をこっそり飲むと、胃酸を抑える薬が重なります。といってもネキシウムが強いので、制酸剤は飲んだ分だけ無駄になります。しかし、制酸剤でも酸を抑える以外の効果は発揮されるので、便秘や下痢などの副作用が出ます。また、腎臓に負担がかかります。太田胃散には蠕動運動を活発にする成分が含まれていますが、もしネキシウムを処方した医師がその成分が必要だと考えていたなら、当然ながらその薬を処方していたでしょう。

 個人の判断で胃薬を服用することは、治療の妨げになることもあるのです。
(文=小谷寿美子/薬剤師)

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