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木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ“究極の商用車”プロボックス/サクシード、ベストセラーの裏にスゴい開発手法

文=木下隆之/レーシングドライバー

 そのため、紙パックを立てられる巨大サイズのカップホルダーになっているのだ。また、サンバイザーには、さまざまなカードが挟めるように細工がされている。乗用車とは数が違う。

「会社と契約しているガソリンスタンド用カードや、駐車場カードもあります。営業マンは1日にずいぶん走りますから、有料道路の回数券もお持ちですね」(同)

 なるほど、である。

「回数券は多量ですし、カードもいわば金券です。取り出しやすさより、セキュリティ性を考えて、ホルダーはバイザーの裏側の目立たない位置に設置しています」

 クリップは表ではなく裏側なのだ。

「マルチホルダーはスマートフォンが収められます。メモ帳が挟めるようにも細工しました」(同)

 取引先からの急ぎの注文に応えられるようになっているのだ。スマートフォンホルダーは、乗用車でも欲しい機能である。

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 1日中外回りすることを想定して、モバイル系の充電機能も充実している。USB端子はもちろんのこと、シガーライターソケットもある。AC100V対応だから、家庭用機器でも問題なく使用できる。

 インパネトレイは、A4サイズの企画書が置きやすい。ラップトップPCでの事務処理もしやすい。左右のシート間隔が広いのは、ビジネスバッグや地図をそのまま収めるためだそうだ。「いまどき、地図ですか?」と聞くと、こう答えた。

「おっしゃる通り、カーナビ時代ですからね。しかし、営業マンがカーナビをリクエストすると、上司にこう言われるそうですよ。『顧客の場所くらい覚えとらんのか』ってね」(同)

 なるほど正論である。また、価格設定も乗用車とは異なる。

「価格は200万円以下に抑えました」(同)

 聞けば、「200」という数字が営業車としての相場だと認識されているとのこと。

「営業車購入の最終決定は、運転手ではなく総務部です。だから、いくら装備を充実させているからと言っても納得してくれないんです」(同)

乗用車は、運転する人が金を出す“オーナー”だ。だが商用車は、金を出すのは運転しない人なのである。200万円という数字にはあまり根拠がないものの、古くからの慣習なのだそうだ。

 とはいうものの、営業マンの職場ともいえる車内環境を整えることは、経営的メリットがある。燃費は経費の削減になる。事故を減らすことも同様だ。疲労低減で、仕事の効率にも影響する。商用車は、実は究極なまでに“ユーザーフレンドリー”なクルマなのである。

「社長、プロボックス/サクシードにしたら、売り上げを伸ばせたよ」なんて声が聞こえそうだ。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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