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外資系企業も日本型「新卒一括採用」導入…欧米、エリート以外は低賃金のブラック企業就職

文=A4studio
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 欧州では日本よりもはるかに若年失業率(15~24歳)が高く、経済協力開発機構(OECD)の2017年のデータによれば、スペインが38.7%でイタリアが34.8%。日本の4.7%という数値と比べると、欧米諸国は非常にシビアな現実に直面していることがわかるだろう。

「さらに欧州では、教育システムと将来の職業とは密接に関係しています。特に顕著なのはフランスの事例で、義務教育にも落第という制度があります。成績不振の生徒は中学卒業後、職人コースに振り分けられ、高校に進学することさえできません。

 高校に進学できたとしても、生徒には複数の分岐点が用意されており、進むべき道が次第に限定されていきます。こうして、エリート教育を受ける者と職業学校で訓練を受ける者の階層構造ができあがるのです。

 欧州の社会はけっきょく、日本のような誰でも高校に進学して大学を自由に選べ、そして新卒で正社員として雇ってもらえるような仕組みにはなっていません。こうした階層社会は、日本ですぐさま受け入れられるものではないでしょう」(同)

新卒一括採用は今後も続いていく?

 海老原氏は「日本型と欧米型、どちらが正しいという問題ではない」と念を押すが、今後、日本の雇用制度はどのような道をたどっていくのだろうか。

「昨今は、日本に進出してくる外資系企業でさえも無限定雇用を一部取り入れ、末端ポスト補充のために新卒一括採用を行っています。経団連の会員ではない外資系企業は、はじめから就活ルールに関係がないので、日本企業以上に早期の新卒囲い込みを狙っているわけです。ベンチャー企業も、規模が小さいときには経験者を求めて中途採用を主にしていますが、やがて成長すると、新卒を雇い始めるようになります。

 企業に人事権が認められ、欠員を末端に集められる無限定雇用が続く限り、新卒一括採用は非常に都合のよいシステムということになります。それを企業が手放すというのは、この先も考えにくい話でしょう」(同)

 ただし、無限定雇用によって企業が負うリスクもあるのだと海老原氏は続ける。

「無限定雇用の場合、企業は労働者に対して『会社に入れる』という契約を結ぶため、仮に任せる仕事がなくなったとしても、すぐには解雇できません。仕事がなくなった際は、人事異動により職務転換することで対応します。

 一方で労働者も、『未経験でも会社に入れる』『賃金や地位は年々上がっていくのが当たり前』といったメリットを享受する代わりに、異動の拒否ができないというデメリットを背負わされているのです。

 本来、雇用というものは企業と労働者との間で“一勝一敗”の関係が保たれるように、さまざまな調整が入り、どちらか片方に利益が傾くものではありません。無限定雇用のメリットを悪用し、利益のバランスを崩そうとするブラック企業が日本の大きな社会問題となっているのは事実ですが、それだけを取り上げて日本型の雇用制度全体を批判するのは、見当外れだといえるでしょう」(同)

 日本の新卒一括採用は独自の進化を遂げ、欧米では実現し得ない、確かなメリットをもたらしている部分もあるようだ。日本と欧米の制度を、雇用契約の違いという本質的な問題を見落としたまま安易に比較するのは短絡的ということか。
(文=A4studio)

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