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『いだてん』“大衆離れ”で低視聴率の理由…偏差値60以上志向に陥るNHKの悪い癖

文=深笛義也/ライター
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 その典型例が、私が編成にいた時に始まったEテレの番組『テストの花道』です。高校生をターゲットにして、大学受験の役に立つような番組をつくろうということでできたんです。そのなかに、『先輩が語る』みたいなコーナーがあったのですが、先輩というのが、早稲田大、慶応大、東大ばっかり。偏差値50前後の大学は一切出てこないわけです。それで『ひどいんじゃない? 誰に向けてつくってんだ、お前らいい加減にしろよ』と文句言ったんです。それから模様替えされて、動画で歴史を覚えようというふうに、誰が見ても学べる内容になりました」

人間ではなくて出来事が中心

 宮藤官九郎は、日本大学芸術学部中退。北野武として映画作品が国際的に評価されているビートたけしは、明治大学工学部除籍(のちに特別卒業認定)である。そこまで傑出したケースを見ずとも、しばらく社会経験を積めば出身大学の偏差値の高さが、能力や実力に比例するものではないことはわかるはずだ。

「劇場で見る映画だったら、暗い中で集中して見るので、多少の複雑さはあってもいいですよ。だけどドラマというのは家庭で見るわけでしょう。そばで赤ん坊が泣いてるかもしれないし、幼児が甘えて抱きついてくるかもしれない。横から妻が家計の相談をしてくるかもしれない。だから複雑さというのは、大河ドラマについては要注意ですよ。やっぱり骨太の縦軸がないと、視聴者はついてこない。そういう基本のところを『いだてん』は大きく外しているんです。

 そもそも主人公が2人で、1つの軸になっていない。ドラマを見る時は、人間を見たいわけですよね。誰かに感情移入して、エモーションを動かしたいわけです。ところが『いだてん』は極めて叙事的で、叙情的じゃない。明治の場面でいうと、ストックホルムオリンピックに日本が参加するかどうかというのが大きな物語で、後半は東京オリンピックを開催するかどうかという物語になっていく。人間ではなくて出来事が中心になっているわけです。人間の物語としては、オリンピックで走ることになる金栗四三(中村勘九郎)がいるようにみえますが、オリンピックに参加するかどうかを取り仕切っている大日本体育協会のトップの嘉納治五郎(役所広司)がメインに見えちゃう。見ているほうは、『誰に共感するんだったっけ?』みたいに戸惑ってしまうのですよ。しかも一人ひとりの人間が出てくる尺が短いんですね。そこにじっくりと気持ちを寄せたいにもかかわらず、ポーンと次の話に飛んでしまう。肩透かしを食らったような感じになる人が、いっぱいいるんです」

 視聴率を稼ぎ、ドラマ関連の賞を総なめにした連続テレビ小説『あまちゃん』と、脚本、プロデューサー、ディレクター、音楽も同じゴールデンチームでつくられている『いだてん』だが、2つの作品はどこが違うのだろうか。

「その違いは非常にわかりやすくて、『あまちゃん』は東京で生まれ育った女子高生、天野アキ(能年玲奈)の成長物語という縦軸が明確でした。そこに、あまちゃんのお母さんの天野春子(小泉今日子)が併走し、おばあちゃんの天野夏(宮本信子)が海女で、あまちゃんは寄り添っていく。この3人がしょっちゅう出てきて、いろんな人間が絡んでくるわけですけど、感情移入がしやすかったわけです。『あまちゃん』もクドカン色が強くて、放送当初、70~80代の高齢層が見なくなったのは事実です。だけど、『あまちゃん』の朝ドラらしくない展開が話題になって、40~50代くらいの中高年が見るようになったんです。

『いだてん』は最初から40~50代が見て15.5%でスタートしたわけですけど、その視聴者が逃げていってしまった。やっぱりクドカンファンというのはそんなにいなくて、皆ドラマの善し悪しで判断しているということでしょう。『いだてん』がツイッターをはじめとしたソーシャルメディアで、“いつもじゃない大河”“ヘンテコ大河”ということで話題になっています。だけどソーシャルメディアをやる人自体は3割くらいはいますが、発信する人は1割くらいしかいないんですよ。SNSだけ見ていると、『いだてん』が盛り上がっているように見えますが、それはラウド・マイノリティであって視聴率にはまったく関係ないんです。

 ネットでの発信が視聴率につながった唯一の例は『天空の城ラピュタ』です。テレビで放送された時に、城が崩壊する時の呪文『バルス』が何時に唱えられるかということで、『ノーカット版じゃないので、この編集の調子だと11時20分じゃないか』『CMの入り方のペースでいくと11時23分じゃないか』などと予想合戦になった。『バルス』の瞬間には5%くらい視聴率が上がったんです。クドカンが役者として出ていた『カルテット』も、すごい名作だっていう呟きがツイッター上に溢れましたが、視聴率は1桁で終わってしまってます。視聴率の高いドラマを支えているのは、むしろサイレント・マジョリティで、たとえば今クール平均視聴率1位の『相棒』なんかにしても、SNS上ではほとんど言及されてないですから」

(文=深笛義也/ライター)

※後編に続く

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