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自衛隊でまたパワハラ自殺事件、処分受けた上司もパワハラ被害者だった?超閉鎖空間の異常性

文=秋山謙一郎/経済ジャーナリスト
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海自幹部自衛官「実力組織だからといってパワハラを認める理由にはならない」

 事件の舞台となった補給艦「ときわ」と同じ横須賀を母港とする艦艇勤務の幹部自衛官(1尉)のひとりが、語気を荒らげて話す。

「仲間、味方を殺してどうするんだ。隊員一人ひとりの特性を見極めて本人の可能性を引き出すことが、全自衛隊的にも求められている。それをこの件で全部ぶち壊してくれた」

 言うまでもなく、自衛隊は実力組織だ。ごく少数だが、一部の隊員やインターネット上には、「すこし厳しいことを言われたくらいで……」と、亡くなった自衛官を誹謗するような声もある。こうした声に対し、前出幹部自衛官は次のように反論する。

「幹部でも一般の隊員でも、私たちは自衛官である前に国民であり、法令を遵守する立場の公務員です。わが国の法律や自衛隊の規則に、『自衛官ならパワハラをしてもいい』などという条文がどこにありますか? 実力組織であることが(パワハラをしてもいいという)根拠にはなりません」

 今や、海自においては、パワハラは刑事犯罪と同じと認識されている。

密室性高い艦艇部隊では「艦長は絶対的権力者」

 だが、艦艇部隊の現場では、こうした海自全体で進みつつあるパワハラ根絶の流れを理解しつつも、どこか追いついていなかった側面もあるようだ。現在、護衛艦に乗り組む40代後半の下士官は言う。

「海自では、艦長は絶対的な権力者です。たとえ『この艦長はおかしい』と思っても、とても逆らえるものではない。艦でナンバー2の副長といえども、意見など言える雰囲気はない」

 徹底した階級社会、ピラミッド型組織である海自のなかでも、とりわけ艦艇部隊はその傾向が顕著だ。艦艇という鉄の塊のなか、四方を海に囲まれ、世間とは隔絶された環境のなかで一日の大半を過ごす。勢い、艦艇乗員たちは、その階級を問わず、海自という組織全体が何を求めているかを考えるよりも先に、まずは艦長の顔色をうかがうようになる。

 もちろん、旧軍でいえば少佐や中佐といった高い位を持つ3佐、2佐の副長や科長クラス(砲雷長や補給長といった職)といえども、例外ではない。人事を左右する艦長の前では、佐官級の副長や科長も入隊したばかりの10代の新人隊員と同じく、「その他大勢の乗員のひとり」(前出の下士官)の扱いなのだという。

 そんな閉鎖空間である艦ならば、たとえ1尉(旧軍でいう大尉)という階級を持つ幹部自衛官といえども、艦長に絶対服従を余儀なくされたことは誰しも容易に察しのつくところだ。

補給艦「ときわ」前運用長の実像とは?

 今回、補給艦「ときわ」で発生したパワハラ自殺事件で処分された前艦長以外の2幹部自衛官のうち、3尉の直属上司にあたるのが前運用長(1尉)である。その前運用長の後輩にあたる現役下士官は言う。

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