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高橋篤史「経済禁忌録」

廣済堂、MBOに暗雲…“ドル箱”火葬場ビジネスに影響で東京の火葬事情に一大事?

文=高橋篤史/ジャーナリスト
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 アコーディアもそうだが廣済堂は村上氏好みの典型的な割安株だ。確かに、2019年3月期の予想1株利益は約22円しかなく、その約28倍に相当するTOB価格は気前のいい数字に見える。が、一方で1株当たりの自己資本は約1114円(18年月末)もあり、TOB価格はずいぶんと買い叩いた値だ。つまり、フローの実力に比べ、過去の儲けを積み上げたストックは膨大にあるという、かなり歪な財務バランスなのである。資産を有効に利用できていないともいえ、これは物言う株主にとっては輪をかけてもってこいの割安銘柄だ。
 
 廣済堂の祖業は印刷業である。ただ、現状、収益の柱となっているのは子会社「東京博善」が手掛ける火葬場ビジネスだ。これはストックの面でも同じで、廣済堂の連結純資産466億円に対し東京博善の純資産は452億円もある。東京博善は余裕資金90億円を廣済堂本体に貸し付けており、それがなければほかに192億円もの有利子負債を抱える廣済堂本体は資金が繰り回せない状態だ。

 つまり廣済堂の企業価値はほとんど東京博善が握っているわけだが、これを顕在化できるかどうかが大きなカギである。とりわけ村上氏にとっては、その点が重要なのではないか。ただ、考えてみれば、一民間企業が複数の火葬場を経営しているというのも不思議な話ではある。そんな独特の会社を傘下に収めている廣済堂という会社は、創業者である故櫻井義晃(本名・文雄)氏の存在を抜きにして語ることはできない。

フィクサー・櫻井義晃氏の剛腕

 政財界に独自の人脈を持つフィクサー――。櫻井氏を簡潔に表現すればそんなところだろう。戦後まもなく印刷業を始めた櫻井氏は出版業に進出、1970年代にはライター事業に参入し、80年代になると買収戦略も駆使して国内外でゴルフ場事業を展開した。

 櫻井氏に関して有名なのは、プロ野球の球団経営にも一時関わっていたことだ。岸信介元首相の秘書だった中村長芳氏が西鉄から引き継いだ球団の経営に苦戦していた77年、スポンサーとなったのである。球団は廣済堂が手掛けるライターのブランド名をとり「クラウンライター・ライオンズ」と呼ばれた。その後、球団は78年秋に西武鉄道への身売りが決まった。現在の西武ライオンズである。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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