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視聴率低迷の『いだてん』、ネットは大盛り上がり…ストックホルム五輪編は期待大!

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第9話が3日に放送され、平均視聴率は前回から0.4ポイント増の9.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。なかなか2桁に復帰しないが、『いだてん』ファンのネットでの盛り上がりはかなり熱く、じわじわと「『いだてん』おもしろいらしいよ」という評判が世間に浸透していく可能性はある。

 第9話は、日本人初のオリンピック選手となった金栗四三(中村勘九郎)と三島弥彦(生田斗真)がシベリア鉄道でロシアを横断し、開催地であるストックホルムに至るまでを描いた。つまり、基本的に密室劇である。

 密室劇というだけで映像に限りが出るのに、史実からあまり外れたことができないという縛りまである。たとえば、ハルビンの街を歩こうとした四三と弥彦が突然ロシア兵に取り囲まれて銃を突きつけられるという場面があったが、これは創作ドラマなら、どこかに連れて行かれて取りあえず尋問される流れだ。

 ところが、実在の四三はこの旅の様子を日記に書き残しているため、そこからあまり逸脱した話は描けない。パスポートを提示するとロシア兵はすんなり引きさがり、それ以上の出来事は起きなかった。ドラマのセオリーから言えば、「何も起きないのかよ」と大いにツッコミを入れるべき場面だ。記録が多く残っている近代ドラマならではのつらいところだと思う。

 ただ、NHKの美術スタッフが作り上げたシベリア鉄道の客車や食堂車は素晴らしかった。ドラマ公式Twitterによれば、片側120台ものLEDモニターをセットの外に置いてシベリア鉄道の実写映像を映し出し、車窓の風景としたのだという。こういうこだわりは素晴らしい。確かに視聴率も大事ではあるが、予算や日数の関係でほかのドラマがなかなかできないような手法で映像を撮り、技術を継承していくのもNHKや大河ドラマの役割なんだろう、という気がする。

 ちなみに、「ハルビンは伊藤博文が暗殺された場所である」ということを示すイメージ映像として、昨年の大河ドラマ『西郷どん』で同じ役を演じた浜野謙太が伊藤博文役でほんの数秒間だけ出演した。これは、大河ファンへのなかなか素晴らしいサービスだったといえよう。

 そうは言っても、列車の旅は17日間も続く。四三らの気分もだんだん滅入りがちになり、ついにはくだらないことで言い争うように。ここでこの回の演出を務めた大根仁は、古今亭志ん生(ビートたけし)の落語に合わせて、四三と弥彦が当てぶり演技をするという斬新な演出を用いた。NHKをよく見ている人や落語ファンなら、同局の『超入門! 落語THE MOVIE』のパロディーだとわかり、ニンマリしたに違いない。このような、元ネタがわからなくても面白く、わかればもっと楽しい仕掛けを入れるのは良い。宮藤官九郎の作品は時々、わからない人にはさっぱり意味がわからないネタを入れてしまうので、今回のようにこのあたりのバランスが取れると見やすい作品になりそうだ。

 第9話ではこのほか、弥彦の「天狗倶楽部方式エール」も大いに視聴者の話題を集めた。食堂車で向かい合って食事をするうちに再び打ち解け、握手を交わした四三と弥彦。弥彦は四三のリクエストに応え、立ち上がってポーズをつけながら「奮えー、奮えー、か・な・く・り!」とエールを送る。

 人目を気にすることなく、快く笑顔で四三の“おねだり”に応える弥彦は金持ちなのにイヤミのない好男子だし、乙女のように目を輝かせて喜ぶ四三の純粋さもまぶしい。どこを取っても対照的な二人なのに、本当にいいコンビだ。大根仁は自身のTwitterで、このシーンが中村と生田によるアドリブだったことを明かしている。役になり切ったからこそ出てきたアドリブといえよう。素晴らしかった。

 一方で、日本選手団の監督を務める大森兵蔵(竹野内豊)が病気で余命が長くないことが明らかになり、団長であるはずの嘉納治五郎(役所広司)は四三たちが現地に着いてもまだ政府の許可が下りずに渡航できないなど、不穏な空気も漂う。ほかにもいくつか触れたいことはあるが、とにもかくにも単調になりかねない回をここまで盛り上げた脚本・演出・役者の力の結集は見事であった。大根氏はTwitterで「次回10話からのストックホルム五輪編、マジでヤバいです!」と予告しており、いよいよ次回以降に期待が高まる。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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