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六代目山口組総本部内にある「山口組食堂」…暴排条例が生んだ、ヤクザによるヤクザのための食堂

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山口組食堂で提供される人気メニュー「カレー南蛮(ライス付き)」

 料理を提供する側も、料理を食す側もすべてがヤクザという食堂がある。通称「山口組食堂」。

 神戸市灘区にある六代目山口組総本部の駐車場の一角に建てられた食堂は、総本部に詰めている部屋住み(直参組長の身の回りの世話から、掃除や賄いに至るまでの雑務すべてを行う)の組員らによって賄われている。

 五代目時代には、「スワット」と呼ばれるボディーガードの組員らが詰めていたため、「スワット部屋」と呼ばれていた建物だったが、六代目体制ではその一階が食堂となっている。

 そもそも山口組食堂ができたのは、2010年前後に全国で順次施行された暴力団排除条例が要因となったといわれている。

「暴排条例が施行されてから、それまで総本部への出前を請け負っていた業者が軒並み配達を拒むようになってきた。今でも配達してくれる業者がいくつかあるにせよ、それだっていつまでやってくれるかわからないし、業者側が続けたくても、反社会的勢力に対する利益供与と見なされ、当局から指導が入る可能性だってある。上層部では、そうした事態を早い段階で見越して、食堂を設置させたのではないか」(六代目山口組系幹部)

 この食堂を利用するのは、プラチナと呼ばれる直参の親分衆のほかに、親分衆の付き人や運転手、二次団体の持ち回り制で行われている総本部のガレージ当番(総本部に出入りする車両の出し入れの確認や、車両を誘導する役割などを担っており、365日24時間体制で行われて、同時に総本部周辺の巡回なども行っている)の組員などで、料金などは一切とっていない。総本部管轄の会計によって運営されているのだ。

 提供されるメニューは、うどんやそば、カレーライスなどが主流で、その日出てくるメニューはあらかじめ決まっている。

「ウチの組織から総本部に部屋住みへと入っている組員がいるので、ウチがガレージ当番などに入るときも、 “顔ヅケ”といって、食堂でもちょっとしたサービスなど便宜を図ってくれている」(三次団体幹部)

 筆者も現役時代には、所属していた組織の親分の付きやガレージ当番で総本部に行くと、この食堂を必ず利用していたのだが、部屋住みの組員によってつくられているだけあって、そこらの食堂よりもうまいのだ。どこの組織の人間であっても、部屋住みに入ると電話当番から掃除、そして賄いを徹底して教え込まれるために、必然的に料理の腕も磨かれていくのである。

「食堂では、付きの組員やガレージ当番の組員だけが食べるのではない。プラチナの親分衆もそこで食事されるのだ。ご飯の炊き方もこだわっているし、一品一品味付けは行き届いている」(前出の幹部)

事務所に行けば腹一杯メシだけは食えるという時代

 暴排条例の施行後、先々を見据えて、組員に対してのあるアンケート調査が行われたことがあった。そこには、手に職がある組員は何ができるのかを申し出るように書かれていた。食堂運営に限らず、法律が厳しくなり、組織運営上必要な業務や調達を外部業者に発注ができなくなった際の対策が早い段階で練られていたのだ。

「例えば、関連施設の補修工事などで業者を使えないなら、手に職を持つ組員に補修させればよいという発想でしょう。実際、暴排条例は留まることを知らないほど、ヤクザの生活を締め付けています。なにが利益供与に当たるかわからない時代になりました。あらゆる活動が組織内で完結できるよう、“自給自足”を目指しているともいえます」(ジャーナリスト)

 ヤクザ社会から足を洗った現在、筆者が六代目山口組総本部にある食堂を利用することはなくなったのだが、総本部で食べたうどんやそばの味をふと懐かしく思い出すことがある。

「ヤクザはどれだけ貧乏しても、事務所に行けば腹一杯メシだけは食えるという時代があった。どの組織の親分も、部屋住みに『メシだけは絶やさずに炊いておけ』と言っていたものだ。贅沢な食事じゃなくてよい。質素でも家族のように同じ物を食べることで連帯感が生まれ、組織の団結へとつながっていくのではないか。現在、食堂運営はその一端を担っている」(業界関係者)

 山口組食堂は部屋住みの組員によって、今日も無料で組員たちの胃袋を満たしている。
(文=沖田臥竜/作家・元山口組二次団体幹部)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
元山口組二次団体最高幹部。2014年、所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新小説『死に体』(れんが書房新社)が発売中。

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