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中谷明彦「クルマの匠(Professional)」

富士スピードウェイを貸し切った中国自動車メーカー発表会に度肝を抜かれた…圧巻の走り心地

文=中谷明彦/レーシングドライバー、自動車評論家

富士スピードウェイを貸し切った中国自動車メーカー発表会に度肝を抜かれた…圧巻の走り心地の画像3

 Lynk & Coがそこまでして中国市場を優先的に考えているのには、わけがある。富士スピードウェイでの発表会当日、会場にはマスコミだけでなく中国自動車メーカー「吉利(Geely・ジーリー)汽車」の経営陣が揃って出席し巨大なメインステージで挨拶を述べた。そうLynk & Coはスウェーデンのボルボ社同様に中国の巨大企業・吉利集団が資本を投じて仕立て上げた国際ブランドなのだ。

 中国メーカー製という世界的にはまだマイナーかつネガティブなイメージを払拭するために無国籍企業の体を装いつつ、販売の主軸は中国国内に置いている。中国人自身もまだ中国製の自動車に対する信頼は大きくなく、欧州ブランドや日本メーカーに対する信頼が厚い。中国メーカーとしては、そのイメージを打破し自国製品の浸透を国内に図り、また国際マーケットでも支持を構築していく狙いがあるのだ。

無国籍感を演出

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 発表会当日、富士スピードウェイで最新モデルとなる03をフリーで試走させてもらえたのは筆者だけだ。その時の印象は「素晴らしい」の一言。03は1.5リッターの直噴ターボエンジンを搭載しているが、そのシリンダー数は常識的な4気筒ではなくコンパクトな3気筒であり、フロントに横置きし前輪を駆動する。だが3気筒特有の振動はなくスムーズに回転し、聞かされるまで4気筒と思って乗っていたほどだ。

 トランスミッションは先進的な7速のツインクラッチDCTを搭載。その制御も完璧でサーキット走行でも問題なく走れる。さらに驚かされたのは、質感の高さと直進性の良さだ。ピットロードを走り始めた瞬間からタイヤが転動する際に発する不快な振動や音が封じ込められていて、静かで快適。内装は豪華でキシミ音なども皆無。ハンドリングも含め車としての完成度が非常に高いと感じさせられた。

 デザイナーであるスウェーデン人でボルボ社出身のアンドレアス・ニルソン氏によれば「03はエンジンやプラットフォームのほとんどをボルボ車と共有しており、メカニズムの秀逸さはボルボ車と同じだ」という。その開発には2500人のスウェーデン人エンジニアがスウェーデンの研究開発センターで当たり、「中国人エンジニアは1人」だという。中国市場向けの生産工場は中国内にあるが、今後欧州や北米にも生産工場を準備し供給していく。

 つまり中国外で販売される車両は中国製ではないとも。そうした事実関係を明確にアピールすることで無国籍感を演出し、世界的な市場で成功を収める狙いだ。

 別ルートで得た情報によれば、日本国内でも2020年中に発売する意向があるという。とすれば星の数ほどもある中国自動車メーカーの先陣を切って吉利汽車が「Lynk & Co」の名の下に日本市場に乗り込んでくることになる。

 ボルボとLynk & Coは共に吉利集団傘下にあるが、2年連続してボルボ車が日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得する国内の輸入車販売に強烈なインパクトを与えた。Lynk & Coがそんな状況に追従し強い楔を打ち込むのか。今後の動向に注目していく必要があるようのだ。
(文=中谷明彦/レーシングドライバー、自動車評論家)

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中谷明彦/レーシングドライバー、自動車評論家

中谷明彦/レーシングドライバー、自動車評論家

武蔵工業大学工学部機械工学科卒。15歳でカートを始め大学在学中にフォーミュラカーデビュー。卒業後はカートップ誌編集部員として働き1985年にプロ・レーサーへ転向。1988年全日本F3選手権でチャンピオンを獲得し、以降全ての全日本選手権、全ての国内サーキットで優勝を納める。三菱自動車ランサー・エボリュ−ションV〜Xの開発に寄与し、スーパー耐久レースではランエボを駆って50勝を記録。5回の年間覇者となる。バサーストやマカオGP、ル・マン24時間レースなど海外レース活動経験も豊富だ。1997年にドライビング理論アカデミー「中谷塾」を開設し、佐藤琢磨(第一期生)を輩出した。ドライビングやメカニズムの理論に精通。近年は中国メディアでも活動し、知名度が高い。2018年5月に慢性骨髄性白血病を発症したが、抗がん剤治療を受けつつ活動を継続。日本の代表的名ドライバーとして「Legend Racing Drivers Club
」のメンバーでもある。

Twitter:@nakaya_juku

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