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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国・ファーウェイvs.米国、全面抗争へ…世界中の通信で支障発生の可能性

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ファーウェイ副会長兼CFOの孟晩舟被告(写真:AP/アフロ)

 中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)がアメリカ政府を提訴する方針であることが明らかになった。アメリカ政府は国防権限法で政府機関に対してファーウェイや同じく中国企業の中興通訊(ZTE)のサービスおよび製品の利用を禁じており、それに対してファーウェイは「裁判もなく特定の企業に制裁を科すのはアメリカ憲法違反にあたる」と主張する見込みだという。

 ファーウェイはアメリカ本社のあるテキサス州の裁判所に提訴するようだが、確かにファーウェイは中国企業であるものの、アメリカ本社はアメリカ企業であり、アメリカの国内法で守られるべき存在になる。判例としては非常におもしろい裁判になる可能性があるが、国防権限法は議会が定めた法律であり、政府はそれに従い行政を行っているにすぎない。そのため、ファーウェイの動きはアメリカ政府と議会のさらなる反発を招く可能性が高い。

 また、国防権限法は安全保障に関する法律であり、国民の安全を守るという国家の最大の責務と主権に関する法律である。世界貿易機関(WTO)でも安全保障に関する問題は例外条項とされており、安全保障を理由に国際貿易などを制限することが許されている。

 この問題を考える上では、法原則としての「統治行為論」が大きな意味を持つことになるだろう。これは「国家の重要な政治的判断は司法による法解釈の枠外である」という考え方で、簡単に言えば「国がなくなればその国の法律は無意味になるので、国家的に重大な判断は司法の判断の枠外である」というものだ。日本でも、過去に自衛隊違憲訴訟などで適用されている。

ファーウェイをいつでも潰すことができる米国


 ファーウェイといえば、副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟被告がカナダで拘束されており、アメリカは身柄の引き渡しを求めている。カナダ司法省は3月1日に身柄引き渡しの審理開始を決定しており、6日には孟被告が出廷する予定だ。

 孟被告と法人としてのファーウェイは1月にアメリカ司法省に起訴されているが、その理由はイランへの金融制裁違反と銀行詐欺(銀行を騙しての不正な送金)、さらにTモバイルに関する産業スパイの容疑であり、問題はそれらが誰の指示で行われたのかである。

 孟被告単独の可能性は低く、中国人民解放軍出身の創業者で孟被告の父でもある任正非最高経営責任者(CEO)や中国政府および軍の関与も指摘されている。アメリカとしては、事実上の終身刑もあり得る刑罰の軽減または免責と証人保護プログラムの適用を引き換えに、孟被告にすべてを吐き出させたいはずだ。そして、仮に孟被告が任CEOや軍の関与を認めれば、ファーウェイ問題は次のステージに移ることになるだろう。

 ちなみに、今回の容疑は金融制裁違反であるため、アメリカとしては大統領令でファーウェイをセカンダリーボイコット(二次的制裁)の対象として「SDNリスト」(アメリカの経済制裁の対象となる人や国、法人のリスト)に入れることができる。そうなれば、ファーウェイはアメリカとの取引がある世界中の銀行の口座が凍結され、一切の金融取引が禁じられる可能性もあるわけだ。いわば、アメリカはドナルド・トランプ大統領の判断ひとつでファーウェイをいつでも潰すことができるといっても過言ではない。

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