ビジネスジャーナル > 自動車ニュース > 新東名・制限速度引き上げの問題点  > 2ページ目
NEW
木下隆之「クルマ激辛定食」

新東名高速・最高速度120 km/hへ引き上げ、走行して見えた“やっかいな”問題点

文=木下隆之/レーシングドライバー

 120 km/h対象車でさえも、トロトロと追越車線を走り続けるドライバーが少なくない。速度差が広がったことで、ドライバーのイライラも重なる。昨今、大きな社会問題になっているにもかかわらず、相変わらず散見される“あおり運転”のきっかけになりはしないかと気をもむ場面もあった。

ドライビングスキルの向上が不可欠

新東名高速・最高速度120 km/hへ引き上げ、走行して見えた“やっかいな”問題点の画像3

 この問題を考えるうえでは、速度無制限のドイツの高速道路「アウトバーン」が参考になる。区間によっては200km/hでも300km/hでも走行が許されているアウトバーンは、速度差が開きすぎるがために、トラック等の低速走行車が追越車線に乗り入れることは禁止されている。

 並走する追越車線が順に平均速度が下がるため、トロトロ運転の乗用車も自らに適した車線を選んだ走行をする。背後を確認せずにフラフラと高速レーンに割り込んでくるドライバーは皆無だ。速度差があることを理解しているドイツ国民は、それが自殺行為であることを理解しているからだろう。

 新静岡インターチェンジ〜森掛川インターチェンジ間の120km速度規制区間を走行した顛末を個人のFacebook上で公開したところ、「アウトバーンを見習うべきだ」とする意見が多数寄せられた。

 ちなみに、ドイツ人のドライビングスキルは、日本と大きな隔たりがある。世界最速の高速道路アウトバーンがあり、一般道であっても100 km/h走行が許されている。その地で育ったことで、クルマを操る能力が磨かれるのだろう。

 同時に、安全意識も高い。アウトバーンでさえ、環境負荷を嫌う街付近やカーブの多い区間では130 km/hに制限される。あるいは、学校スーパーマーケットのある市街地では30 km/hになる。その130 km/h区間や30 km/h区間では、ドライバーは厳格に速度を守るのである。

 今回、取材のために120km速度規制区間を走った経験からすると、クルマの性能を考えれば120 km/hでもまったく不安がないが、運転スキルの向上と意識改革が急務だと感じた。クルマの性能が高まり自動車大国に成長した日本が、ドライバーのスキル向上を置き去りにしてきたことのツケは大きい。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

新東名高速・最高速度120 km/hへ引き上げ、走行して見えた“やっかいな”問題点のページです。ビジネスジャーナルは、自動車、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!