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これまでも何度も、ボルボはスウェーデン製であることに誇りを持ち、北欧の味を好むユーザーが多いことを彼と語り合ってきた。新型XC40も、「どんだけスウェーデン好きなのよ」と言いたくなるほどである。相変わらず、XC40ユーザーも北欧好きなのだろう。
中国・ジーリーに買収される
ボルボはスウェーデンを原産とする自動車メーカーである。本社は、スウェーデン第二の都市、イエーテボリにある。組み立て工場は、歴史あるレンガ組の建屋だという。北欧らしく、趣のある地に社を構えているのだ。
だが、資本は中国に支えられている。商用車は安定していたものの、乗用車部門はたびたび赤字になった。1999年にはフォードに売却された。ところが、そのフォードが2008年のリーマンショックで経営危機に陥り、結果的に中国の浙江吉利控股集団(ジーリー・ホールディングス)に放出されて今に至る。スウェーデンを代表するブランドなのに、世界経済に翻弄されたのである。
ただし、ジーリーが「金は出すが口は出さない」主義だったことが幸いした。ボルボの個性を重んじたことで、アイデンティティは失われずにすんだのだ。豊富な資金力に支えられながら、スウェーデンらしさを注ぐことが可能になり、経営は改善。それどころか、毎年利益を上積みさせている。
ボルボは、スウェーデンの魂を失っていない。そしてボルボファンの多くは、スウェーデンという穏やかな北欧の国の、その空気感に惚れて購入しているのだと思う。そうでなければ、インパネのスウェーデン国旗を好み、レザーシートにも国旗を縫いこむことを受け入れ、挙げ句の果てに、ボンネットから国旗をぶら下げてしまうはずがないのだ。
もし、ジーリーがボルボのアイデンティティを否定していたならば、今のボルボ復活劇は幻に終わったことだろう。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)
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