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法社会学者・河合幹雄の「法“痴”国家ニッポン」第12回

野田市小4虐待死、「母もDV被害者ゆえに逮捕は不要」は誤り…法で裁かれるべき

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社会復帰のための“みそぎ”としての逮捕・刑罰

 さらにいうと、「なぎさ容疑者はDV被害者であり、逮捕されるべきでない」というのは、逮捕や刑罰という司法制度を、単なる“懲罰”としてしかみなしていない、非常に一面的な物言いです。今回のように、従属的な立場で虐待に加担してしまった加害者や、介護を苦に親を殺してしまった加害者などは、多くの場合、自分の行いを心から後悔するものです。そういうときには、短い刑期でもきちんと刑罰を受けさせ、精神的に落ち着くまで待ってから社会に復帰させるほうが、むしろ本人のためになる。

 逆に、あなたは悪くないからと見逃され、家で一人ぼっちになってしまうと、自殺にまで至ってしまうようなケースさえ少なくない。逮捕や刑罰というものは、そのような最悪のケースの防止と本人の“みそぎ”のため、という側面をあわせ持っているわけです。

本当に“最悪な”ケースなのか

 最後に、もうひとつつけ加えておきたいことがあります。それは、確かに今回のケースはきわめて痛ましく、尊い命が奪われてしまったという点では非常に凄惨な、悲しい事件ではあるものの、ならば犯罪史上まれに見るような、そういう最悪の虐待事件に分類されるのか……というと、必ずしもそうではないということです。なかなか報道には出てきませんが、世の中には、凄惨さという点では今回をも上回る、とうてい正視に耐えないような虐待の事例が少なからず存在するのです。

 父親は働きもせず、博打と酒と薬物にどっぷり浸かり、子どもに対して日常的に近親相姦を含む暴力三昧、それに対して母親は、わが身を守るために見て見ぬふりをするのではなく、完全に無関心でただただ眺めている……。そういった類いの、あまりの悲惨さゆえに報道すらされずに闇に埋もれてしまうような事案も、毎年一定数発生している。逆にいえば、そういう意味で“最悪”とまではいえないとみなせるような今回の事件は、対応マニュアルや人員が整ってさえいればなんとか助けられたかもしれない、残念でならないケースでもあるのです。
(構成=松島 拡)

●河合幹雄(かわい・みきお)
1960年生まれ。桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)。京都大学大学院法学研究科博士課程修了。社会学の理論を柱に、比較法学的な実証研究、理論的考察を行う。著作に、『日本の殺人』(ちくま新書、2009年)や、「治安悪化」が誤りであることを指摘して話題となった『安全神話崩壊のパラドックス』(岩波書店、2004年)などがある。twitter:@gandalfMikio

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