「弊社では当初より“介護偽薬”と称し、高齢者の薬の飲みすぎや飲みたがりに適切に対処していただくという利用法を提案して偽薬を販売しており、そうした問題でお困りのご家族の方から、非常に好意的にとらえていただけています。実際、適切なケアのために偽薬が必要であるとおっしゃる介護職の方も多いのです。

 ただ、介護業界ではコンビニエンスストアなどですぐに購入できるタブレット菓子を、偽薬として利用する方法が広く知られており、価格面で弊社の偽薬は選択されづらいだろうとも考えています。また、業界の専門職としての倫理的な懸念として、利用者を騙すことが適切でないと感じるという意見をいただいたこともあります。

  一方、医療業界からは、減薬に活用できるのではないかという反響もありました。特に高齢者の多剤併用は健康被害をもたらす可能性があり、現在は厚生労働省が通達を出して問題解消に乗り出すなど、医療業界では非常に関心が高まっています。薬を減らそうとしても、患者が薬を飲まないことに対して心理的な不安が出てしまい、減薬することに失敗したという事例があるそうですが、こうしたケースで偽薬が活用できるかもしれないというご意見を、薬剤師の方からいただいたこともあります」(水口氏)

偽薬が社会保障費の抑制に効果

 水口氏はこういった減薬へのアプローチは、社会保障費抑制の効果も期待できるという。

「私はこの国の財政破綻は起こり得ると思っており、不健全財政の主因ともいえる医療費高騰の問題を見過ごすことはできないのですが、偽薬がその問題解決の一助になる可能性を感じています。偽薬の積極的な医療応用が、医療費を含む社会保障費の抑制につながるだろうと考えているのです。

 仮に財政破綻が起こってしまったとすると、その後の医療業界は、医療を求める人の数は減らないにもかかわらず、人員・物資が共に不足していくことが容易に想定できます。その際、偽薬を用いたなんらかの医療行為は必然的に活用されることになるだろうと考えていますので、今のうちから偽薬の利用を推進することの意義もあるでしょう。次世代へツケをまわさないことを前提とした持続可能な医療は、今すぐにでも実現に向けて動きだすべきだと思いますし、持続可能な医療において偽薬の活用が見込まれると信じる以上、今からそれを推進したいと考えているのです。

 プラセボ効果を有効に活用できれば、低コストかつ高クオリティな医療を実現できるかもしれません。特異的な医薬品の開発が不要であるという低コスト性はもちろんのこと、副作用の懸念を最小限に抑えられたり、アンメット・メディカル・ニーズ(まだ治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)に対して、有効な手立てとなりうる高クオリティ性を有していたりと、偽薬の活用法は多岐にわたるのです」(同氏)

 水口氏は「今後、錠剤においては色・サイズ・刻印・包装形態などが異なる偽薬、また別の剤型においてはカプセル剤や顆粒剤などの偽薬も取り扱いたいと考えています」とのことで、プラセプラスのさらなるバリエーション展開を検討中。水口氏が手掛けているのはあくまで“ただのラムネ菓子”のようなものではあるが、それは医療・介護現場の問題解決に役立つものであり、社会保障費の抑制の一助にもなり得る可能性を秘めているようだ。
(文・取材=昌谷大介/A4studio)

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