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日本の「ごみ処理」が売られるⅡ その3

東京3市・ごみ処理場、民間委託契約めぐり不正行為…企業の言いなりで巨額税金を無駄に

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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 このように、入札のやり直しが必要であったにもかかわらず、助役を処分するだけですまされてしまった。この工事契約を委託契約の中に潜り込ませた問題に加え、債務負担行為を構成自治体でも財務処理しなければならない問題もあった。

「債務負担行為」

 自治体の予算は単年度主義が原則だが、15年の長期にわたる契約は、当該年度以降も事業者に契約金を払い続ける約束をすることになる。後年度にわたり支払いを続けることを予算上も明記する場合、いわゆる「債務負担行為」として後年度負担分の会計処理をすることが必要になる。もしその点を欠落させれば、財政上余裕がないことに議会も住民も気が付かず、北海道夕張市のように破綻する事態となる。

 この原則に基づき、柳泉園組合は一部事務組合として、債務負担行為の予算処理はしていたが、本件契約に示された百数十億円の歳出に見合う歳入をどのように確保するのかという点については、構成3市の分担金の割合なども決めていなかった。さらに、構成市での「債務負担行為」の予算処理も行われていなかったのである。

 現在、進行中の住民訴訟では、原告住民がこの点を問題としたことに対して、被告側は、柳泉園組合が予算措置すれば、構成市は、その義務費として分担金で支払わなければならないから、構成市の会計処理がなくとも構わないと説明している。自治体の独立性を無視する乱暴な主張である。

 実際、原告の一人である森輝雄議員が西東京市の財務担当者に確かめると、構成市は債務負担行為を会計処理していないため、後年度負担分についての支払い義務はないと説明し、柳泉園組合の説明とは180度相反している。つまり柳泉園組合は、支払い根拠のない予算を予算化していたといえる。自治体の会計原則からすれば、歳入と歳出を等しく会計処理しておく必要があったが、明らかに自治法上の違反行為といえる。

 結局、一部事務組合の柳泉園組合のように日常の運営資金を構成市の分担金で賄うところでは、債務負担行為は構成市でも行う必要があったが、なされていなかった。

巨大焼却炉メーカーに譲渡される日本のごみ処理

 堤さんは『日本が売られる』で、国民の生活や命を守るための国や地方自治体の資産が、外国の強欲資本、ハゲタカ資本に売られようとしている現状を訴えたが、筆者は、日本のごみ処理の観点からその動きを検証した。

 基礎自治体である市町村が持つごみ処理の権限が、PFI等の民営化によって、そして国際的な巨大資本ならぬ巨大焼却炉メーカーによって、権限の譲渡が図られている実態を見てきた。そこから窺える事実は、民営化によって民間の活力やアイデアを生かすというものではなく、国や自治体からお金を引き出すことをめぐる利権が生まれていたということだった。

 実例として取り上げた柳泉園組合で行われようとしていた長期包括契約という民営化は、下記の問題があることをみてきた。

1.特定企業の落札をターゲットにした不正な入札制限が行われ、
2.入札事業が開始した時には、消滅している事業体の入札を認め
3.大規模改修事業の必要性を問うことなく70~80億円の工事を計画し
4.工事契約を請負契約とせず、議会承認をオミットしようとし、
5.総合評価一般競争入札と言いながら、応札企業の提案内容を隠し、議事録すらとっていなかった。
6.構成市の分担金の後年度負担の会計処理、債務負担行為を行わず内容論議を行わなかった。

 柳泉園組合における長期包括契約という民営化は、自治体が民間の力を借りて、効率よく、より安く事業を進めるという建前とは、まったく正反対の事態である。官民癒着の下、法令無視の不正行為が進んでいたことがわかった。このような民営化を進める行政の陰には、国や地方自治体の役人たちが自らの天下り先の確保のために、自治体を食い物にしている動きが見えてきた。

 一般廃棄物、一般ごみの処理は自治体が担ってきた。英国のサッチャー政権が進めた新自由主義的なPFI法が日本でも取り入れられ、公設民営化や民設民営化が進められてきたが、そのなかでも長期包括契約が注目を集めてきている。

 すでに取り入れている自治体では、批判的に検証されている実例は少ないが、本シリーズから見えてきたのは、長期包括契約の下で出資・分担する構成自治体にとっての利点がまったく検討されていないという事態だ。そこでは自治法上で定められた競争入札の原則が適当にもてあそばれ、情報の公開や公正・公明に進めるべき原則も蔑ろにされていた。

 柳泉園組合の例でいえば、現在の焼却炉を建設した焼却炉メーカーである住友重機械工業株式会社の影響力の下、その関連会社への利便を図ることがすべてに優先され、巨額の税金無駄遣いがなされていた。その住友重機械工業は京都市での溶融炉の導入をめぐって京都市から訴えられ、153億円の和解金の支払いに応じたという。

 柳泉園組合での長期包括契約問題と同時期、そして契約金もほぼ同額の金額であり、柳泉園組合での契約がその穴埋めであったとしたら、構成市の住民は目も当てられない。繰り返しになるが、自治体にとって極めて重要な一般廃棄物の処理が、焼却炉メーカーに巨額のお金をつけるように売却されていたのである。

 もちろんこのような違法・不法な譲渡は、司法の下でチェックされるべきである。また、このような不正な手段で事業を展開すれば、その企業体は自らの技術革新や開発を怠ることになる。公正な競争力を蓄えることはできない。競争力を失った日本の焼却炉プラントメーカーは、国際的なハゲタカ資本に飲み込まれていくのであろう。改めて問われるのは、住民が核になって、自治権を守る闘いと住民参加型の街づくり、自治体づくりである。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

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