LINEショッピング、日本人の買い物&金融の“入口”化…アマゾンすら“出店”する理由


 SNSの威力は非常に大きい。なぜなら、SNSは多くの人の行動に影響を与えるからだ。わたしたちの心理には、一人で行動するよりも、大勢で行動することを優先する傾向がある。そのため、SNSを活用してマーケティングの効果を発揮しようとする企業が増えてきた。

 LINEはSNSに自社のポイント制度を付加し、消費者が複数のサイトやアプリから自分に適したものを選ぶ仕組みを整備した。その上、わが国のSNS市場において、LINEのシェアは突出している。各企業にとって、LINEとの関係強化は、若年層を中心に多くの消費者に効果的にマーケティングを行うことを可能にするだろう。その需要をLINEは取り込んで、ショッピングへの“入口”としての機能を提供し、自社のエコシステムを拡大させている。

圧倒的なイノベーションへの期待

 
 LINEはSNSのテクノロジーを生かして、金融、ショッピング、旅行などのプラットフォーマーへのゲートウェイとしての機能を強化し、さまざまな発想やモノ、資金がより快適に、より高い満足度を伴って取引されるネットワーク空間・環境の整備を目指している。この取り組みは、LINEだけでなく、他の企業や業界を巻き込んだイノベーションに発展する可能性がある。将来的には、LINE自らがゲートウェイとしての機能だけでなく、さまざまなサービスを提供するプラットフォーマーとしての機能を強化する展開もあるだろう。

 同社の金融ビジネスへの取り組みはそのよい例だ。銀行や保険会社には、資金決済や保険の設計などに関するノウハウ、専門性がある。現在、わが国では少子化と高齢化、人口減少が同時に進んでいる。金融機関は経営の持続性確保に危機感を強めている。サービス向上や経営内容の安定のためにネットワークテクノロジーを活用することは重要だが、ゼロから自前で取り組むことは難しい。

 一方、LINEはSNSおよびネットワーク上での人々の行動様式に関する知識を持っている。若者からの支持も高い。金融機関にとって、実績あるテックカンパニーと連携することは、資本支出を抑えつつ新しい取り組みを進めるために重要なことといえる。

 LINEはSNSのテクノロジーをベースに、人工知能を用いたIoT(モノのインターネット)などへのビジネスを強化し、新しいサービス提供を目指している。その上で、協業を求める企業が増えれば、LINEは手数料収入を増やし、業績を拡大できるだろう。

 LINEは、他の企業などと連携して新しいテクノロジーの開発と実用化に取り組むことに前向きだ。その姿勢は、他のIT企業などに刺激を与えるだろう。その結果として、新しい発想、従来にはない取り組みを進める企業が増えれば、わが国経済のダイナミズムは高まる可能性がある。LINEがどのように戦略を立案・執行し成長につなげるか、実に興味深い。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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