10月の消費増税、中小企業の6割が「準備していない」…約3割が全増税分を価格に転嫁できず

安倍晋三首相(右)と麻生太郎財務大臣(左)(写真:日刊現代/アフロ)

 今年10月、いよいよ消費税率が8%から10%へ引き上げられる予定だ。2014年4月に5%から8%へ引き上げられた際には、回復基調にあった景気の冷え込みを招き、日本経済を悪化させる一因にもなった。そのため、政府はキャッシュレス決済によるポイント還元などの経済対策を打ち出してはいるが、いまだ再々延期論もまことしやかに流れている。

 振り回されるのは企業側だ。東京商工リサーチが全国の企業に消費税増税への影響をアンケート調査【※1】したところ、増税を「延期・中止すべき」が49.5%と半数を占め、増税で「景気が悪くなる」は57.8%に達した。一方で、中小企業の約6割が増税の「準備をしていない」と回答し、増税分について「すべて価格転嫁する」は5割台にとどまっている。ただし、本調査は18年9月14~30日に実施していることから、現在は回答の割合が変動している可能性もある。

 中小企業ほど増税の景気への影響を懸念し、また準備が遅れている現状が浮き彫りになった。消費税増税が企業に与える影響について、東京商工リサーチ情報部の前川夏希氏に話を聞いた。

消費増税で“外食離れ”が起きる可能性

――調査の概要について教えてください。

前川夏希氏(以下、前川) 増税の時期について、「予定通り実施すべき」は3903社(構成比47.0%)でした。一方、「時期を延期して実施すべき」は1768社(21.3%)、「増税を中止すべき」は2337社(28.2%)で合計49.5%と、延期または中止を求める声が僅差で上回っています。「予定通り実施すべき」を規模別で見ると、大企業(資本金1億円以上)が753社(52.5%)、中小企業(資本金1億円未満と個人企業など)は3150社(45.9%)で大企業の比率が高くなっています。

 次に増税による景気の予想ですが、「悪くなる」が4798社(57.8%)、「現状維持」が3089社(37.2%)、「良くなる」は138社(1.7%)でした。「悪くなる」を規模別で見ると、大企業が752社(52.4%)、中小企業は4046社(58.9%)で、中小企業がより悲観的な見方をしていることがわかります。

 また、準備については「準備していない」が4788社(59.8%)と約6割を占め、「準備している」は2248社(28.1%)にとどまっています。規模別では、「準備していない」は大企業が593社(42.9%)、中小企業は4195社(63.3%)で大きな差がついています。

 中小企業の準備が遅れている背景には、コストも人材も不足しているという事情があります。中小企業庁はレジの導入・システム改修などの支援や軽減税率制度の周知を進めていますが、浸透にはまだ時間がかかるでしょう。

――ここにも人手不足の影響が出ていますね。

前川 18年の人手不足関連倒産は過去最多の387件を記録しています。特に「求人難」型の倒産が増えており、中小企業がレジやシステムの改修に対応できる人材をすぐに確保するのは難しいのが現実です。

――消費税増税により、もっとも打撃を受けるのはどの業界でしょうか。

前川 感覚的には外食産業ではないかと思います。一般的な飲食料品は税率が据え置きになる一方で明確に価格が上がるので、外食を控えようという動きが出ても不思議ではありません。今、飲食業の倒産が増えていますが、約9割が負債1億円未満です。そのため、中小の飲食業にどのような影響が出るかは注視すべきです。

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