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私が柏児童相談所に通報して驚いた、あまりに酷い対応…小4女児死亡事故はなぜ起きたのか

文=林美保子/フリーライター
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私が柏児童相談所に通報して驚いた、あまりに酷い対応…小4女児死亡事故はなぜ起きたのかの画像1千葉県 HP」より

 2月19日、千葉県野田市では、虐待の恐れなどがある子どもについて関係機関が情報を共有する会議を行った。1月に父親から虐待を受けていた小4女児が死亡した事件の対応について初めて検証する場ではあったが、このケースを担当していた柏児童相談所は、事件について話し合う前に退席したという。「この事件について野田市と向き合う担当者が決まっておらず、調整できなかった」というのが理由だそうだ。

 1月にこの事件の第1報を聞いたとき、担当したのが柏児童相談所と知り、「さもありなん」と、私は思った。自分自身、柏児童相談所へ通報をした経験から、「あそこは、あてにならない」と思っていたからだ。

 そして、このニュースである。調整できなかったという内部事情を理由にすること自体、職員が逃げ腰であることを露呈しているわけで、少なくとも当事者機関の責任として誰かが、誰もいなければ所長が代表として出席するべきだろう。

学校も児相も効力なし

 私が柏児童相談所に通報したのは、近所に住む女性の息子への虐待だった。

 2009年、A子一家が引っ越してくると、半年もたたないうちから、息子B男(小2)への虐待が始まった。昼夜を問わず母親A子の怒鳴り声と息子の泣き声が聞こえてきた。

「死ね、おまえ、ドン!(すごい音)、やれよ、ホントにボケ! ドン!」

 母親はちょっと感情が高ぶったという範疇を超えて、いつも半狂乱状態になっていた。

「早く! 早く! 早く食え! 早く! 早く! 早くせーよ!」と、延々20分も怒鳴りつけながら食事を急かしていたこともある。しばらくして父親が単身赴任となり、母子2人になると夜もお構いなしに怒鳴り声が聞こえるようになった。

 もっとも多いのが23時から25時の間。とても小学生へのしつけとは思えない時間帯だ。我が家は比較的早く寝るので、こんなときには決まって起こされてしまう。どうも、その頃になると母親の感情の抑制が利かなくなるらしい。

 B男がかわいそうでたまらなくなり、まずは、同居する高齢の母への定期訪問に訪れた民生委員に相談した。民生委員が小学校に報告すると、学校がB男の同級生から聞き取りをして虐待が明らかになった。校長と担任による自宅訪問が行われ、児相からの指導もあったと聞く。しかし、学校や児相の指導も効力はなかった。

 13年のある日、真夜中にA子の怒鳴り声やB男の泣き声で目が覚めた。ドンドンガタガタガタンとひどい物音もする。もしかしたら、A子は身体的な虐待も始めたのではないかと心配でたまらなくなり、翌日意を決して、「これから、相談に行きたい」と柏児童相談所に電話をした。ところが、切羽詰まった私の思いとは裏腹に、「予約でいっぱいなので、来てもらっても対応できません」と女性職員に断られた。ほかの案件で手がいっぱいなのか、それとも、A子親子のことはある程度把握しているからなのかわからないが、非常に不愛想でそっけなかった。

 必死に訴える私に、「それでは、今、電話で説明してください」と渋々といった感じで尋ねてきた。そして、「連絡をするかもしれない」と言って電話を切り、その後の連絡は一切なかった。

ついに、警察に通報する

 その頃、交番の巡回訪問を受けた。「何かお困りのことはありませんか?」と警察官に聞かれたときに、A子のことを相談すると、「いつでも通報してくれれば、現場に駆けつけます。遠慮なく連絡してください」と言ってくれた。

 数カ月後、A子の家から激しい物音が続いた。その数日前、B男が泣きながら、「殺せよ!」と発した声が聞こえていたこともあり、意を決して交番に通報すると、すぐさま男性警察官1名と女性警察官2名がA子宅に駆けつけた。

 15分ほどA子親子とやり取りした後、我が家にそっとやってきて報告をしてくれた。

「身体を見せてもらったところ、身体的虐待の兆候はありませんでした。おかあさんは、『受験勉強でちょっと親子喧嘩をしただけ』と言っていましたけれども、また何かあったら連絡ください」

 警察の出動にはさすがのA子も驚いたのか、かなり効力があった。半年くらい静かになったのだ。

 その後、A子のヒステリーは減ったものの、B男が中学生になると、今度はB男が家庭内暴力を振るうようになった。それに対してもさまざまな手段が講じられ、A子宅の問題は通算8年以上の歳月を経て、やっと小康状態になっている。

遅れている日本の対応

 小4女児死亡事件を受け、児相の負担が大きいこと、必ずしも経験豊かな専門家が配置されているわけではないこと、他の機関との連携がなされていないことなど、今、盛んに議論されている。私自身の経験からも、児相や学校レベルではなかなか解決が難しいため、警察との連携は必要だと思う。

 児相や教育委員会が父親の恫喝に怯んでしまっては、プロとは言えない。父親の望むとおりにしたら女児がどんな不利益を被るかを考えれば、自分がどんなに恐怖感を覚えても、いや恐怖感を覚えるような父親ならなおのこと、そこのところを死守するのが専門家だと思う。聞けば、児相の職員は2~3年で別の部署に異動になってしまうのだという。専門家といえるようになるには経験も必要である。柏児童相談所の対応のまずさは、数、質両方の力不足から来ているのだろう。

 以前、虐待していないのに誤解され親子が引き離されてしまう米国映画を見たことがある。それだけ米国ではずいぶん前から児童虐待が深刻で、そのための対策が徹底しているそうだ。

 米国では、裁判所が虐待する親から子どもを保護し、その親へのカウンセリングなどを命じる体制を整えている。一方、日本では経験豊かな児相の相談員が育っていないにもかかわらず、児相が虐待介入も家族の支援も両方の仕事を担っているのが実状だ。

 これ以上の犠牲者を出さないためにも、児童虐待に対応する制度や組織を早急に整備することが求められる。
(文=林美保子/フリーライター)

林美保子/ノンフィクションライター

林美保子/ノンフィクションライター

1955年北海道出身、青山学院大学法学部卒。会社員、編集プロダクション勤務等を経て、執筆活動を開始。主に高齢者・貧困・DVなど社会問題をテーマに取り組む。著書に『ルポ 難民化する老人たち』(イースト・プレス)、『ルポ 不機嫌な老人たち』(同)、『DV後遺症に苦しむ母と子どもたち』(さくら舎)。

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