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私が柏児童相談所に通報して驚いた、あまりに酷い対応…小4女児死亡事故はなぜ起きたのか

文=林美保子/フリーライター
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ついに、警察に通報する

 その頃、交番の巡回訪問を受けた。「何かお困りのことはありませんか?」と警察官に聞かれたときに、A子のことを相談すると、「いつでも通報してくれれば、現場に駆けつけます。遠慮なく連絡してください」と言ってくれた。

 数カ月後、A子の家から激しい物音が続いた。その数日前、B男が泣きながら、「殺せよ!」と発した声が聞こえていたこともあり、意を決して交番に通報すると、すぐさま男性警察官1名と女性警察官2名がA子宅に駆けつけた。

 15分ほどA子親子とやり取りした後、我が家にそっとやってきて報告をしてくれた。

「身体を見せてもらったところ、身体的虐待の兆候はありませんでした。おかあさんは、『受験勉強でちょっと親子喧嘩をしただけ』と言っていましたけれども、また何かあったら連絡ください」

 警察の出動にはさすがのA子も驚いたのか、かなり効力があった。半年くらい静かになったのだ。

 その後、A子のヒステリーは減ったものの、B男が中学生になると、今度はB男が家庭内暴力を振るうようになった。それに対してもさまざまな手段が講じられ、A子宅の問題は通算8年以上の歳月を経て、やっと小康状態になっている。

遅れている日本の対応

 小4女児死亡事件を受け、児相の負担が大きいこと、必ずしも経験豊かな専門家が配置されているわけではないこと、他の機関との連携がなされていないことなど、今、盛んに議論されている。私自身の経験からも、児相や学校レベルではなかなか解決が難しいため、警察との連携は必要だと思う。

 児相や教育委員会が父親の恫喝に怯んでしまっては、プロとは言えない。父親の望むとおりにしたら女児がどんな不利益を被るかを考えれば、自分がどんなに恐怖感を覚えても、いや恐怖感を覚えるような父親ならなおのこと、そこのところを死守するのが専門家だと思う。聞けば、児相の職員は2~3年で別の部署に異動になってしまうのだという。専門家といえるようになるには経験も必要である。柏児童相談所の対応のまずさは、数、質両方の力不足から来ているのだろう。

 以前、虐待していないのに誤解され親子が引き離されてしまう米国映画を見たことがある。それだけ米国ではずいぶん前から児童虐待が深刻で、そのための対策が徹底しているそうだ。

 米国では、裁判所が虐待する親から子どもを保護し、その親へのカウンセリングなどを命じる体制を整えている。一方、日本では経験豊かな児相の相談員が育っていないにもかかわらず、児相が虐待介入も家族の支援も両方の仕事を担っているのが実状だ。

 これ以上の犠牲者を出さないためにも、児童虐待に対応する制度や組織を早急に整備することが求められる。
(文=林美保子/フリーライター)

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