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林晋哉「目からウロコの歯の話」

歯医者さんの「麻酔」の怖い話と注意点…2歳女児死亡、なぜ歯科医は救急救命を怠ったのか?

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医師や歯科医に課せられる「善管注意義務

 善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)とは、「善良な管理者の注意義務」の略で、「業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと」(デジタル大辞泉より)です。ややわかりづらい定義ですが、専門性をもって行われる行為には、法的に注意義務が課せられます。

 医師や歯科医師にも善管注意義務が課せられています。通常、患者は、医師は高度な専門知識を持ち、万全の注意を払って治療にあたると信じて治療を受けます。こうした善管注意義務が履行されることで、医療行為が傷害罪や過失致死罪に問われないのです。たとえば、がんの手術で不幸にも命を落とすことがあっても、善管注意義務を果たしていれば「適切な医療行為の結果」と判断され、犯罪とはならず、家族も納得できるのです。

 今回のケースはこれとはまったく逆で、払われるべき万全の注意が払われていなかったために女児が死亡し、元院長は善管注意義務を果たしていなかったと判断されたのです。

 歯科治療中に患者の急変があった場合、歯科医が行う救命措置には限界がありますから、一刻も早い救急搬送が最善手です。呼吸の確保をしながら救急車の到着を待つのですが、歯科医院が評判低下を恐れ、救急車が乗りつけるのをためらって救急搬送の要請が遅れる場合があります。

 救急救命の訓練を受けている歯科医ならば、救急搬送の重要性を理解しているので躊躇なく要請しますが、救急救命の知識も乏しく、訓練を受けたこともない歯科医は評判を気にして救急搬送の要請が遅れがちなのです。

 今回のケースの歯科医がどの程度の知識を持っていたのかは知る由もありませんが、歯科医には救急救命の訓練を義務化するなどの法整備が急務で、それが今回のような不幸な事故の再発防止の最善手です。

 患者さん側ができる予防法などについては、本連載記事『歯科治療で死亡事故発生…意外に恐ろしい麻酔とデンタルショックの話』に記しているので、併せてお読みください。
(文=林晋哉/歯科医師)

●林 晋哉(歯科医師)
1962年東京生まれ、88年日本大学歯学部卒業、勤務医を経て94年林歯科を開業(歯科医療研究センターを併設)、2014年千代田区平河町に診療所を移転。「自分が受けたい歯科治療」を追求し実践しています。著書は『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、『歯医者の言いなりになるな! 正しい歯科治療とインプラントの危険性』(新書判) 、『歯科医は今日も、やりたい放題』(三五館)など多数。近著は『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」: -あなたもいつか歯を失う』(パブフル)。

林歯科HP:http://www.exajp.com/hayashi/

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