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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

活況の不動産投資市場が“下落するとき”…ファンドバブル時と同様の動き

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 さらに、投資対象用途にも広がりが出ている。これまではオフィスや、マンションなどの住宅、商業施設などが主な投資の対象だったが、ホテルや物流施設、ヘルスケア施設などに広がっている。

 投資対象が多様化するのは決してネガティブな事象ではないが、投資を勧誘する側はこれまで以上に投資家に対しての正確な説明責任が求められることになる。とりわけ最近はREITを出口に想定しただけのやや乱暴な資産形成のファンドの設立もみられる。アパートや旅館、簡易宿所などへの投資は、オフィスやマンションなどに比べて投資リスクも大きい。投資家の無知につけこむ投資対象の広がりには、注意を払わなければならない。
 

3.マーケットに潜むリスクとは

 
 近年、大手不動産会社の有利子負債の金額は急増している。住友不動産の有利子負債額は3兆5000億円になっている。三菱地所や三井不動産も2兆5000億円程度。いずれも売上高の1.5倍から3.6倍に及んでいる。森ビルに至っては売上高の5倍近くの有利子負債を抱える状況にある。

 もちろん各社とも金融技術を駆使してリスク耐性を整えているだろうが、金利変動のリスクを常に抱えている状態にあることに変わりはない。

 金利上昇リスクは大手不動産会社ばかりの問題ではない。金利上昇は不動産の収益性を直撃することで価格下落リスクに晒されることとなる。投資マネーは不動産に利がないとみれば、オルタナティブな投資対象に切り替え、物件売却を加速させ、投資金額を減らす。とりわけ投資マネーが保有するのは都心部の不動産が多いため、都心部での不動産価格の下落が周辺不動産の価格を引き下げることにつながる。

 さらに金利の上昇は相続対策や純粋投資を行っていた個人投資家層を直撃する。金利上昇によりアパートや賃貸マンションなどの利回りが落ち、借入金の返済に支障を及ぼす可能性がある。金利上昇時には不動産価格は下落に向かうので、物件売却という出口も選択しづらくなる。特にハイレバレッジで投資を行っている投資家ほど債務超過に陥るリスクが高まる。

 実需の減退も不動産投資マーケットでは大きなリスクとなる。本来、賃貸不動産は実需があってはじめて収益を生み出せるものだが、節税などが目的のアパート投資や販売会社の賃料保証のみに依拠したような不動産投資を行った場合には、競争力を失った不動産から投資リスクが顕在化する恐れがある。

 最近世間を騒がせた「かぼちゃの馬車」というシェアハウス投資などは、販売・運用会社の高利回り保証が実は物件売却資金を原資とした自転車操業であったことが判明したが、商品企画の拙さはリスクの顕在化につながる。

 特に個人投資家にとっては金利の上昇と実需の減退は大きなリスクだ。そしてこのリスクは折り重なって襲ってくる傾向にある。不動産投資マーケットの動きを常に注視することが必要だろう。

 投資対象をよりオポチュニティックスにふった不動産ファンドなども、物件価格の下落は大きな痛手となる。理由は同じで出口での価格維持が難しくなるからだ。

 不動産は投資対象としては大きな金額の投資だ。こうしたリスクの顕在化は、国内事情だけではなく、リーマンショック時のように海外から突然降りかかることもある。投資を行う際の借入金の割合(LTV)や出口での売却可能性など、あらゆるリスク対処法を施しておくことが肝要だ。
 

4.不動産投資マーケットの今後

 
 日本の不動産投資マーケットは、現在国内外の投資マネーを集めて好調に推移している。この好調は日本経済の堅調さのみならず、世界経済が極めて順調であることに起因しているといってよい。

 世界的なカネ余りの状況は、投資マネーのリスクに対する警戒心を落とすことにつながる。2008年に勃発したリーマンショックも、初めは「対岸の火事」程度にしか思われなかったアメリカのサブプライムローン問題が、やがては大きな津波となって日本に押し寄せてきたことは今でも記憶に新しいところだ。

 金利は上昇の機会を窺っている。自国ファーストを掲げるアメリカのトランプ政権は、中国をはじめとする世界各国との摩擦を強めている。日本もこうした動きから無傷ではいられない。日本の国内も東京五輪後は、いよいよ首都圏でも高齢化や大量の相続発生が起こり、投資マネーが流入し続ける都心部はともかく、多くのエリアで不動産価格が下落する可能性が出てくる。

 とりわけ東京以外の大阪、名古屋を含めた地方都市はさらに深刻な事態に陥ることも予測される。常に世界の投資マネーを惹きつけ、またマネーを使って都市の持続可能性を高めていくために、今後の日本の不動産投資マーケットは、世界中の投資家に対して情報開示を徹底し、さらに説明責任を果たしていくことだ。

 幸い投資マネーは潮の満ち引きのような性格がある。つまり、一度引き潮で日本から去っても、日本が正常な経済状態、政治体制を保ち続けることにおいて、再び日本に満ち潮として現れる存在であるからだ。そのためにも、課題が山積する日本の経済や社会の問題に全員が知恵を絞り、解決策を打ち出し、新しい国家像を築いていくことが必要だ。

 投資マーケットは日本の状況を映し出す鏡でもあるのだ。
(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

●牧野知弘(まきの・ともひろ)
オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にもかかわり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みにこたえる。

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