
体罰禁止の法制化について安倍晋三首相が言及したとの報道があったが、19日には児童虐待防止法と児童福祉法の改正案が閣議決定され、親権者らによるしつけ名目での体罰禁止も明記された。幼児・児童虐待事件が頻発している事態を受けてのことらしい。
この閣議決定報道や識者のコメントに接して、これはまた見当違いな方向に進んでるなと呆れると同時に、これで教師ばかりか親までも気持ちが萎縮し、子どもに厳しさをもって相対することができなくなるのではないかと、子どもたちの将来を考えて暗い気持ちになった。教育現場では、授業中にいくら注意しても騒ぐのをやめない生徒を叩くのはもちろんのこと、立たせたり正座させたりするのも体罰として禁じられており、うっかり正座させたりすると処分されるのである。
まずはじめに言っておかねばならないのは、私はけっして体罰を推奨する立場にはないし、親はどんどん体罰すべきだと考えているわけでもない。ましてや虐待などけっしてあってはならないことだ。だが、体罰と虐待を一緒くたにとらえているところが問題だと言いたいのである。
衝動コントロールできず、傷つきやすい子どもたち
『ほめると子どもはダメになる』(榎本博明 /新潮社)
その結果、社会化されないままに育ち、規則を守れないなど、自分の衝動をコントロールできない子どもが増え、「小1プロブレム」といわれるような状況になってきた。これは、幼稚園から小学校への移行でつまずく子どもが非常に多くなっていることを指すものである。具体的には、授業中に席を立って歩いたり、教室の外に出たり、授業中に騒いだり、暴れたり、注意する先生に暴力を振るったり、暴言を吐いたりする。
小学生の暴力行為が急増しているところにも、衝動コントロール力の低さがあらわれているとみることができる。前回の教師の体罰事件についての記事でも紹介したように、小学校における生徒の暴力行為の発生件数は2万2847件で、高校の6462件の3.5倍となっている。2011年までは小学校の発生件数は高校よりはるかに少なかったのだが、12年から増え始め、ついに13年に高校を抜き、15年以降さらに急増中で、今や高校の3倍以上となっている。