パートやアルバイトから社長に出世した1部上場大企業4社

井村屋グループ本社(「Wikipedia」より)

「あずきバー」や肉まん・あんまんなどで知られる食品メーカーの井村屋グループは、中島伸子副会長が4月1日付で社長兼最高執行責任者(COO)に就任する。女性のトップは1896年の創業以来初めてだ。

 2月23日朝日新聞は「井村屋G社長に初の女性、アルバイト出身の中島伸子氏」と報じた。

「中島氏は新潟県出身。福井営業所でのアルバイト勤務を経て、25歳で正社員登用試験を受けて入社した。3人の子どもを育てつつキャリアを重ね、53歳で女性初の執行役員と関東支店長に就任。その後も女性初の取締役や副社長、副会長を歴任してきた。
お祝い時の赤飯のように小豆を使った食文化を残そうと、毎月1日を『あずきの日』にするキャンペーンを提案するなど、豊富なアイデアの持ち主としても知られる。同社は多様性を重視した経営改革を進めており、これまでの実績を踏まえて中島氏の社長就任が決まった」(同紙より)

 同社は主力アイス「あずきバー」が過去最高ペースの販売を記録するなど、業績は安定。2019年3月期の連結決算は売上高が前期比4.3%増の470億円、営業利益は同7.4%増の16億円、純利益は同7.9%増の12億円と、増収増益を見込んでいる。

 大西安樹社長兼COOは、3月に新規事業開発のために立ち上げる新会社「井村屋スタートアップ プランニング」の社長に就く。同社が強みとする小豆や肉まんなど食品関連領域で、国内外問わず新事業の立ち上げを目指す。米国の大手量販店向けに「やわもちアイス」を売り込んでいる。

 浅田剛夫会長兼最高経営責任者(CEO)は今年1月、「第17回渋沢栄一賞」を受賞した。この賞は、埼玉県が優れた企業活動と社会貢献活動を実践する経営者を表彰するものだ。渋沢栄一は、埼玉県深谷市の出身。多種多様な企業の設立にかかわり、「日本資本主義の父」と呼ばれている。

 浅田会長は「肉まん・あんまん」や「あずきバー」をロングセラーに育成。小学生以下を対象にした食育活動を通じて日本の伝統的食文化を継承したことが受賞の理由となった。

パート・アルバイトから経営トップになった人物列伝

 パート・アルバイト出身の女性社長としては、中古本販売チェーンのブックオフコーポレーションの橋本真由美・元社長が有名だ。橋本氏は、一宮女子短大家政科栄養学科コースを卒業後、栄養士として工場や病院に勤務。結婚のため退職し、専業主婦として2児の母親となる。

 その後、1990年にブックオフ1号店(神奈川県相模原市)で開店当初からパートとして勤務。当時は時給600円で、「娘の学費の足しになれば」ぐらいの軽い気持ちで応募したという。パートのまま2号店の店長となり、後に正社員になる。

 そして2006年6月、創業者の坂本孝氏の後任として社長に就任。東証1部上場企業において、新卒採用ではなく、創業者との血縁関係もないパートタイマー出身者が経営トップに就くのは非常にまれなケースとして、一躍、時の人となった。

 本などを「お売りください」のキャッチコピーや、「立ち読みOK」といった同社躍進のきっかけとなったアイデアは、パート時代の橋本氏の提案だという。

 タレントの清水國明氏は橋本氏の実弟だ。その縁で、清水氏がブックオフのCMに出演していたこともある。現在、ブックオフコーポレーションは、ブックオフグループホールディングスの主要な連結子会社である。

 また、バイト出身社長として必ず取り上げられるのが、牛丼の吉野家ホールディングス社長、会長を歴任した安部修仁氏だ。

 高校卒業後、プロミュージシャンを目指して福岡から上京。日本大学在学中に、バンドの活動資金を稼ぐために吉野家でアルバイトとして働いた。音楽の道をあきらめて、1972年に吉野家(吉野家ディー・アンド・シーを経て吉野家ホールディングス)に正社員として入社した。

 だが1980年、吉野家は会社更生法を申請して倒産した。セゾングループの出資で再建された吉野家ディー・アンド・シーで安部氏は88年に取締役となり、1992年に当時42歳で生え抜きの社長となった。これ以後、22年間吉野家の経営を指揮して「ミスター牛丼」と称された。

 2012年、安部氏の後任として吉野家ホールディングスの社長に就いた河村泰貴氏も、アルバイト出身だ。高校卒業後、吉野家で5年間アルバイトをした。安部氏が社長に就いた翌年の93年、吉野家ディー・アンド・シーに入社。

 河村氏は子会社の讃岐うどんチェーン「はなまる」の社長として不振だった業績を立て直した。その手腕が評価され、2010年に吉野家ホールディングス取締役、12年に43歳で社長に抜擢された。二代続けてのアルバイト出身社長が誕生して話題となった。

 旅行会社、エイチ・アイ・エス(H.I.S.)の前社長、平林朗氏もアルバイト出身だ。高校卒業後、青果市場やすしチェーンのアルバイト、ビリヤード台の販売、パチンコのテクニックを指南する仕事など、さまざまな経験を積み、米国へ渡った。

 帰国後、米国でツアーガイドをしていたことを生かし、「高卒じゃ正社員はダメだけどアルバイトならOK。がんばったら正社員にする」との条件付きでH.I.S.に入った。

 経歴を買われ、アルバイトにもかかわらずバリ島に赴任、業績不振だった旅行を手配する会社を立て直し、現地に支社を立ち上げた。その功績が認められて、1年後の1993年に正社員となった。そして2008年、社長にまで上り詰めた。

「学歴フィルター」という言葉があるほど、学歴でふるいにかけられる傾向が、最近の就職活動では一段と強まっている。そんななか、非正規雇用から社長になった“突破力”のある人物が光る。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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