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杉江弘「機長の目」

北朝鮮の政府専用機=オンボロはデタラメ…日本より安全、米国エアフォースワン並み

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 したがってコックピットには2人のパイロットのほかに航空機関士とナビゲーターと合わせて4人(加えて交信専門のラジオオペレーターも搭乗の可能性あり)が従事し、何事が起きても安全を担保しようとしている。

 機材自体が古いのではないかという意見もあろうが、専用機は使用頻度が少ないこと、エンジンは常に新しいものに交換されていること、それにハンガーのなかで保存され整備をきちんとされているとすれば、安全性はまったく問題はない。

 ちなみにアメリカのエアフォースワンに使用されているジャンボ機は「747-200B」を改造したもので機体は約45年前の古いものである。この事実も、テレビ局のディレクターに話すと皆一様に初めて聞いたと驚くのである。エアフォースワンにはわざわざ新幹線でいえばO系のような古いタイプを使っているが、その理由は航空機関士とナビゲーターを搭乗させることができる仕様になっているからである。

 747-200とそれ以前の機材では、コックピットの天井に天測用のセクスタントと呼ばれる機器を外に出せる窓がついているからである。

 私の所見ではイリューシン62Mはさすがにボーイング747-200Bと比べるとシステムや性能において劣っているものの、安全性やナビゲーションなどで実用上なんら遜色ないレベルのものと考える。

 現世界の主要国の政府専用機をみると、エンジンを4基装備しているのはアメリカ、ロシア、中国、ドイツ、それに北朝鮮でその他はフランス、イタリア、カナダそれに4月からは日本も加えてパイロット2人だけで運航する双発機となっている。

 危機管理をよく理解している国では、専用機はまず4発機、続いて航空機関士などを加えた編成を選択していることを忘れてはならない。

上から目線では道を誤る


 昨年末、イリューシン62Mについてよく知らない評論家や政治家が話したいくつかを紹介しておきたい。最初はある未来工学の「専門家」が夜のワイドショーで語った、シンガポールへ行く前に中国・大連での首脳会談に向かったときのことだ。

「イリューシンはまともにナビゲーションできないので、ハイテク化された輸送機を先に飛ばせて、そのあとをついていった」

 このコメントには開いた口がふさがらなかった。イリューシン62Mにはコンピュータを使ったナビゲーションシステムが装備されており、さらに旅客機の運航はIFR(計器飛行)が基本、前の輸送機の後ろを見てついていくなどという飛び方などありえない。

 航空のことを知らないと、このような子供だましのようなコメントを平気でやり、それを多くの視聴者は信じてしまう。輸送機が先に飛んだのは、地上での専用車を先にそれで運んだにすぎないのである」

 さらに驚くコメントをしたのは麻生太郎副総理だ。

「旧ソ連時代のポンコツ飛行機、シンガポールに着くまでに落ちなきゃよいのにね」

 麻生氏は思ったことを正直に話すタイプなので、発言は本意であろう。とすれば首相官邸はイリューシン62Mについて極めて不正確な情報しかもっていないことになる。一体、防衛省や国土交通省は正確な情報を官邸にあげているのか、そうでないとすれば我が国の外交、防衛にも影響が出る。

 相手の国の装備を正確に把握せずして、交渉も防衛もできるはずがなく、本当にこの国は大丈夫なのだろうかと心配になってくるのである。
(文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長)

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