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スタバ開業にコンビニコーヒー…コーヒー消費量激増と「平成」、「レトロ」だけの店は潰れる

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

コンサルタント」の役割も変わった

 一連の実績が評価されて、最近の阪本氏の仕事は多彩だ。前述の記事で紹介したコーヒー抽出器「FURUMAI」(フルマイ)の開発・監修もそのひとつだが、流通のプロジェクトチームに加わり、一緒に新事業にかかわることも多い。

「コーヒーの世界はイノベーションが次々に起きます。『パナマ・ゲイシャ』は2000年代になって脚光を浴びた品種です。焙煎は、以前は『深煎り』が主流でしたが、現在は豆の特性を引き出す『浅煎り』が世界的な傾向となりました。もちろん品種や栽培方法などによっても焙煎や抽出は変わります。それを追い続けていかないと、最新の味は語れません」(阪本氏)

 阪本氏の活動を観察すると、「コーヒーコンサルタント」の役割も変わってきたと感じる。以前は、店の開業を支援するコンサルタントが目立ったが、かつてほどのニーズはない。ネット社会の進展で、一定の情報が手に入るようになったことも理由のひとつだろう。

 これから求められるのは、「新しい価値」を打ち出せる人だろう。コンビニコーヒーは「1杯100円で一定のおいしさ」を実現し、パナマ・ゲイシャは「1杯3000円」でも注文が入る商品になってきた。個人経営の店が大手チェーン店と対抗するためにも、店の主力商品となる「コーヒーとコーヒー豆を多く売る」ことを目指さないと生き残れない。

「切り口を磨く」時代

 コーヒー業界は、大ベテランでも仕事ができる(できた)業界だが、今後はどうか。筆者は戦後の喫茶業界の歴史も見てきたが、昔の経験に固執していると、次世代のお客は獲得できないと思う。「昭和レトロな喫茶店」も、味が昭和レトロのままでは、味にうるさい現代の消費者をリピーターにはできない。「当時の味を現代風に再現」する必要がある。イノベーションには、切り口の斬新さや付加価値の訴求も含まれるのだ。

 コーヒーに対する消費者の舌も、平成年間で間違いなく肥えた。もし、「ウチの店はコーヒー通を相手にしていないから、味はそこそこでいい」と思う経営者がいたとしたら、「“そこそこ”のレベルも上がった」ことを再認識したほうがいい。

「ぬるま湯」に安住すると、変化に気づかず“茹でガエル”になるのは、どの業界も同じ。平成の次の時代は、「逃げ切り」が許されない時代となりそうだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。
近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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