沖有人「不動産の“常識”を疑え」

社長の家が「田園調布・成城の一戸建て」から「赤坂・西新宿のタワマン」に移った合理的理由


 しかし、この不動産鑑定手法は今や主力ではない。現在もっとも幅を利かせているのは、収益還元法というものだ。これは不動産投資信託が21世紀から生まれたように、世界基準の不動産金融の影響を受けて急速に一般化した。土地を買って開発するデベロッパーは土地を買う際に所有した場合の事業収支をつくるが、収益還元はこの事業収支の影響を強く受ける。収支が合わない投資はしないということが不動産価格の動きを制限することになる。こうなると、もっとも不動産の評価に影響を与えるものは収益性、つまり賃料になる。

 賃料は地ぐらいの影響を受けにくい。先ほど書いたように、高級住宅地は暮らすには多少不便だからだ。高級住宅地ほど閑静であるように都市計画されているので、店舗はなく生活は不便になりがちだ。

 賃料はアクセスでほぼ決まる。オフィスに近い、駅に近い、乗り換えが少ない、地下鉄で地上まで出るのに時間がかからない、などが賃料には非常に重要なのだ。

不動産は「地ぐらい」から「賃料」へ

 日本は持ち家率が高く、年齢が上がると持ち家取得が進む。戦後の家族は祖父母同居の三世代家族も多かったが、その後「核家族」と言われる親子だけの同居となり、現在は単身化が進んでいる。

 世帯構成は一貫して小さくなり、世帯人員は減少の一途だった。世帯が小さくなると、住まいを自分の意思で決めることができる。また、ファミリーの子ども中心の生活から、働き手である親の共働きも一般化し、標準的な世帯は変貌を遂げた。世帯の中の働き手が増えると職住近接ニーズが強くなり、大きな家が必要ではなくなり、都心寄りに内周化して住むようになる。

 現在の不動産価格において重要なのは、賃料を決めている担い手になる。賃料は借家層に決定権があり、その主たる層は単身の若い世代になっている。地ぐらいから賃料への流れは、持ち家から借家へ、親世代から子ども世代への流れでもあるのだ。

“地ぐらいの亡霊”とは

 災害は忘れた頃にやってくる。地ぐらいは災害の戒めの要素が大きかった。地震、川の氾濫、火事はその戒めとして、埋立地よりも台地、川沿いよりも丘の上、木造密集地ではなく大きな敷地が良いとされた。これは今も変わらない重要な歴史の教訓である。しかし、社会インフラも変わってきている。大地震後の建築基準法の変更、道路の整備、ライフラインの共同溝化、河川の治水、建物の耐火構造など、社会ストックの質が徐々に良くなっているのは事実だ。

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