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『いだてん』視聴率最低を更新…“違和感だらけでわかりにくい演出”は壮大な伏線の可能性

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『いだてん~東京オリムピック噺~』公式サイトより

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第13話が3月31日に放送され、平均視聴率は前回から0.8ポイント減の8.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。8%台は第10話と第11話に続いて3度目だが、今回は自己ワーストを更新してしまう結果となってしまった。

 第13話は、金栗四三(中村勘九郎)がマラソンを完走できなかった理由を振り返る回だった。第12話では、レース途中で行方不明になって、いつの間にか宿舎に戻っていたという結末だけが明かされていたが、今週は「どんなことが起きたのか」を説明する内容だったというわけだ。

 おそらく、ほとんどの視聴者は、実際の四三がマラソン途中に道を間違えて行方不明になった史実を知っているはずだ。本編の後に放送される『いだてん紀行』でも、すでに紹介されたからだ。だから、視聴者の興味は「なぜ四三は完走できなかったのか」にあったのではなく、「その史実をドラマではどう描くか」にあったといっていい。筆者も大変に期待していた。

 だが、残念ながら第13話で描かれた「四三が完走できなかった真相」は、あまり満足のいくものではなかった。史実の四三はコースを外れて民家に迷い込み、そこで介抱される。四三はその親切に深く感謝し、日本に戻ってからも手紙を送るなど交流を続けたのだという。

 ドラマでも、意識もうろうとなった四三が民家に迷い込み、介抱されたという大枠は史実通りであった。ドラマ公式Twitterによれば、実際に四三を助けたペトレ家の本物の子孫が出演していたそうだ。時間を超えた素晴らしい縁だと思う。ただ、演出の問題だと思うが、そのペトレ家の人々がそこまで親切な人々に見えなかったため、モヤモヤが残った。

 確かに介抱はしていたが、意識もはっきりしない四三に無理やり飲み物を飲ませたり口にパンのようなものをツッコんだりと、結構扱いが雑なのである。四三への態度も微妙に冷めており、「なんとか命を救おうと懸命に手を尽くした」といえるほどではなかった。こんな状態で、四三とペトレ家に後々まで続く交流が生まれるんだろうか、といぶかしんでしまった。

 さらに、四三がレース途中に行方不明になって大騒ぎになっていたことを示すような描写もなかった。かろうじて本編後の『いだてん紀行』では、「消えた日本人」として話題になったと紹介していたが、ドラマのほうではまったくそんな様子はなかった。別に史実通りにするのがベストだというつもりはないが、史実を改変した結果、ストーリーがつまらなくなってしまうのでは意味がない。図らずも、四三がストックホルムで有名人になったという史実はドラマとしても格好のエピソードなのだから、しっかり描いてもよかったのではないだろうか。

 別のポイントとして、ポルトガルのマラソン選手・ラザロの死が映像で描かれなかったことも、個人的には残念だった。史実のラザロ選手は、マラソン途中に熱中症で不幸にも亡くなってしまったのだが、ドラマでは四三がそのニュースを新聞で知る、というエピソードで処理された。

 これは演出上の選択であり、「自分が意識もうろうとしている間に、あのラザロが死んでしまった」という四三の喪失感を表現するのにはよかったのだと思う。とはいえ、せっかく「似た境遇にある四三とラザロが異国の地で仲良くなる」という創作エピソードを前日譚として描いたのだから、ラザロの最期もきちんと見たかった気はする。それによって視聴者の心も動かされ、四三がこの時に抱いたであろうさまざまな感情を疑似的に共有できたのではないかと思うからだ。

 このほか、第13話では美濃部孝蔵(森山未來)が初めて高座で落語を演じる日の様子にも結構な尺を割いたが、これについては当然のごとく視聴者から賛否両論が上がっている。筆者は、落語パート自体の出来については「賛」だが、全体の構成として適切だったかどうかについては「否」である。もちろん、「マラソンを完走できなかった四三」と「初高座を最後まで務めることができなかった孝蔵」をシンクロさせる意図があったことは踏まえたうえで、である。

 とはいえ、脚本の宮藤官九郎は当初からずっと四三と孝蔵をシンクロさせることにこだわり続けている。そうであれば、これは壮大な伏線であって、後々思わぬかたちでひとつにつながるのだと考えるのが自然だ。現時点では違和感のほうが強いが、いつかあっと驚く種明かしをしてくれることを期待している。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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