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6番と9番を大事にする理由
内田さんの馬券の買い方は、私が目にしたことがない手法だった。「好きな数字は大事にすべし」と語る内田さんは、6番と9番にまず目をやった。「ロック馬券」をベースに馬券をイメージするのだそうだ。
福島記念を勝ったのは1着固定した9番のアドマイヤコスモスだったが、4頭塗った2着欄に2着の馬番がなく、3着欄には塗られている。せっかく勝ち馬を当てたのに2着が抜けてしまった。配当はなんと236倍。私なら地団駄を踏んで悔しがるところだが、「そんな安い配当はパスだ! そこんとこヨロシク!」と内田さんは笑顔である。このレースで取材ギャラの半分を失ったのに、悔しさを微塵も感じていない。
次のレースの予想を終えると、内田さんは競馬での武勇伝を語ってくれた。当時からさかのぼること5年前、競馬で50万円近く儲けたのも束の間、財布をスラれてしまったのだという。
「頭にきてねぇ。取り返してやろうと徹底的に予想したよ」と挑んだのは、翌日のNHKマイルC。大事な数字である6番のロジックが勝ち、3連単20万馬券を的中させる。払い戻し金額は「スラれた金額とほぼ同じ」だったという。
「8年前、ロンシャン競馬場のパリ大賞典の日だった。タクシー代と晩飯代だけ残してVIPルームに入ったんだ。カウンターのボーイに『なんかいい馬いない?』と聞いたら、1番と6番だと。それで素直に1→6の馬単を買うと、100万円近くになったんだ。ボーイにご祝儀を渡しに行ったら、ほかの連中も並びやがった(笑)」
イメージと直感を大事にする、内田さんらしいエピソードだった。
「それが『格好良く負ける』ってことだ」
レース後、オグリキャップやサイレンススズカといった思い出の名馬の名を口にしながら、話は競馬という文化、そして馬が人間に与えた恩恵に向かっていった。
「寺山修司さんとケンカしたことがあるんだけど、彼の名言は『競馬新聞は文学を超えるほどおもしろい』。なぜなら、いろんな馬のデータが全部載っているよね。1日中推理ができる。競馬はギャンブルのイメージもあるけど、決してそうじゃないんだな」
「日本はもちろん、中国や韓国の遊牧民族は馬に恩恵をもらっているよね。ビートたけしと宮沢りえと俺でパリで映画を撮ったとき、古代ヨーロッパの人間は生きるために城、食物、武器、そして馬を大事にしたんだと思わされたんだ」