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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

金融庁、銀行にギャンブル依存症の人へ“細かすぎるカウンセリング”求める文書が波紋

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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金融庁、銀行にギャンブル依存症の人へ“細かすぎるカウンセリング”求める文書が波紋の画像1「Gettyimages」より

「なぜ銀行に専門外の問題の解決を求めるのか」

 銀行関係者の間で、金融庁が3月8日に発表した「ギャンブル等依存症に関連すると考えられる多重債務問題に係る相談への対応に際してのマニュアル」に対する不満の声が上がっている。

 そもそも、ギャンブル等依存症への対応としては、昨年10月の「ギャンブル等依存症対策基本法」の施行に合わせて、基本的施策として依存症を患っている人とその家族に対する相談支援等の推進や、関係機関や民間団体等の間における連携協力体制の整備、人材の確保、養成および資質向上のための施策推進等が明示された。

 このなかに、銀行としては依存症に関連すると考えられる多重債務問題に対する相談業務が盛り込まれた。そして、このためのマニュアルが金融庁によって作成され、銀行がこのマニュアルに沿って対応を行う方針が打ち出された。
 
「この時点でも、銀行からは『ギャンブル等依存症の人の相談に乗るのは、果たして銀行の役割なのか』という疑問の声が出されていた。そして、今回の対応マニュアルの改訂では、その声が一段と高まっている」(銀行関係者)

 例えば、新たなマニュアルでは、相談者が銀行を来訪した時の対応を以下のように例示している。

 まず、借金の状況を確かめながら、ギャンブル等へののめり込みの状況を確かめるための質問をし、本人の反応を見る。そして、質問に対する本人の反応から、ギャンブル等へののめり込みがうかがえる場合には、医療機関、精神保健福祉センターや保健所への相談状況など、回復に向けた取組状況を質問するようにする、としている。

 しかし、相談者がギャンブル依存症であるのか否かを見抜くのは難しい。そこでマニュアルでは、借金の問題が生じることになった経過や余暇時間の過ごし方を質問するなかで、ギャンブル等により借金が増加した様子が疑われる場合に、それを見極めるための質問事項の例が掲載されている。それは以下のようなものだ。

(1)ギャンブル等のことを考えて仕事が手につかなくなることがありますか。
(2)自由なお金があると、まず第一にギャンブル等のことが頭に浮かびますか。
(3)ギャンブル等に行けないことでいらいらしたり、怒りっぽくなることがありますか。
(4)一文なしになるまでギャンブル等をし続けることがありますか。
(5)ギャンブル等を減らそう、やめようと努力してみたが、結局だめだったことがありますか。
(6)家族に嘘を言って、ギャンブル等をやることがしばしばありますか。
(7)ギャンブル等をする場所に、知り合いや友人はいない方が良いですか。
(8)20万円以上の借金を5回以上したことがある、あるいは総額50万円以上の借金をしたことがあるのにギャンブル等を続けていた経験はありますか。
(9)支払予定のお金を流用したり、財産を勝手に換金してギャンブル等に当て込んだことがありますか。
(10)家族に泣かれたり、固く約束させられたことが2度以上ありますか。

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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